[2007.4.9] 今期のNHKラジオスペイン語講座入門編は、ブエノスアイレスが舞台でゲストもアルゼンチン人と、いろいろ期待していましたら、なんとvosの活用まで扱ってくれるようです。今年1月から3月までの応用編でも、やはりアルゼンチン人をゲストにサッカーをテーマとした講座で、楽しめました。
アルゼンチンのスペイン語で最も特徴的なのがvosという代名詞です。ほかの国のtúに当たる代名詞で、親しい間柄の2人称単数になります。アルゼンチンに行く前からこのvosの存在は知っていましたが、動詞の活用はtúと同じだろうと勝手に思っていました。ところが、行ってびっくり、全然違うのですね。標準語を習った外国人が関西に行ったようなものです。ところが、日本で売られている一般的なスペイン語の本でこの代名詞に言及しているのはごくわずか、動詞の活用まで解説しているのは皆無です。まあ、普通に旅行をするだけならustedで間に合いますし、万一誰かと親しくなってもこちらはtúで話せばいいので、問題はないのでしょうが。
そういうわけで、もしもアルゼンチンに旅行する人ですでにスペイン語は問題ないよ、という人のために1年間の経験から得た文法解説を試みたいと思います。素人のやることなので、もし間違いがありましたらどうかご指摘下さい。
ちなみに、今ではこれを体験するのは実に簡単です。Yahooアルゼンチンのページに行けばすぐに目に入ってきます。例えば、トップページの一番上にCompará precios en Yahoo! Shoppingと書いてあります。スペイン語を普通に習った人ならcomparáってcomparaやcompare, comparadの間違いでは?と思うことでしょう。これが動詞compararのvosに対する命令形なのです。
-er動詞と-ir動詞がしっかりと別々に活用しますので、túよりも簡単ですね。
serはvos sosとなります。irはtúと同じでvos vasです。estarもtúと同じでvos estásです、というか、これはアクセントも含めて規則活用ですね。今気付きました。
アクセントが最後の音節にあるため、語幹の母音が変化せず、規則活用になります。
例:jugar -> vos jugás
poder -> vos podés
tener -> vos tenés
pedir -> vos pedís
venir -> vos venís
単音節の動詞ではアクセント記号がなくなるので、túと変わりません。
例:dar -> vos das
ver -> vos ves
これはtúの活用と一緒です。
例:hablar -> vos hablaste
comer -> vos comías
vivir -> vos vivirás
書いているうちに線過去形は自信がなくなってきました。何か、最後の音節にアクセントがあったような気もしてきます。
túの活用で不規則になるものもvosではわずかな例外をのぞいて規則的に活用します。でも、実はhacerもそうなのか、ちょっと自信がありません。−hacéと言っているのを聞いたことはないような、あるような、、、Ponerやsalirは大丈夫です。
túの活用と同じです。
ver -> ve(規則活用と言えなくもない)
ir -> ve
oir -> oye(これはoíだったかも)
これもあまり自信がないのですが、túの活用と一緒で、最後の音節にアクセントがあると思います。
例:ver -> vos veás
接続法過去を使うような複雑な構文の会話を聞き取るほどの能力はありませんので、どんな風に活用していたかは全く分かりません。
これらはtúと同じです。
例:Es tuyo.(所有代名詞)
Es tu libro.(所有格)
Te amo.(直接目的格)
¿Te gusta futbol?(間接目的格)
¿Te vas?(再帰代名詞)
(文法用語で正確に何と言うかは知りませんが)
実は、これはよく分かりません。vosだったような気もするし、tiだったような気もします、、、
Lo hice para vos.
Lo hice para ti.
どちらも聞いたような気がします。
アルゼンチンの中でも発音やアクセントはいろいろと違いますが、何と言っても最も印象的なのはブエノスアイレスとその周辺の発音でしょう。この辺りの人たちをporteño, porteñaと呼びますが、同時にここの方言と言う意味もあります。(正確にはたぶんブエノスでも波止場の周りの下町の一部に限られるのだと思いますが。)
一般にスペイン語では「ll」と「y」の発音は国や地域によって大きく違います。Porteñoではこの2つの子音は全く同じで、日本語のシャ行に近い音になります。こういう発音をするところは他にはないと思いますので、「私 (yo)」を「ショ」と発音している人がいたら、まず間違いなくブエノスアイレス出身です。
発音とは少し違いますが、最も良く使う挨拶の言葉、¡Buenos días!がアルゼンチンでは¡Buen día!と単数形になります。発音もほとんど「ボン ディア」と聞こえ、お隣ブラジルの「ボン ジア」とそっくりです。ブエノスにはイタリア移民が多かったのでその影響もあるのでしょうか。イタリア語の「ボン ジョルノ」も単数形のように見えます。
上にも書きましたが、¡Buen día!はアルゼンチン独特の挨拶です。その他、よく聞くけれど、日本で習うことがないものに¿Cómo anda?や¿Cómo andás?があります。¿Cómo está?よりは親しい感じで、¿Cómo le va?と同じ語感だと思います。
2003年2月11日作成、2007年4月9日更新
國分 尚