「植物色素-実験・研究の手引き-」 林孝三編 養賢堂発行

 

p81 植物組織からの抽出液の呈色反応



 

1.フラボノイド

p83 表W・2 フラボノイド色素の呈色反応
フラボノイド色素の種類 呈色反応
苛性ソーダ溶液 1) 濃硫酸 2) 塩酸-マグネシウム 3) ナトリウムアマルガム-酸 4)
カルコン類 橙色から赤色 橙色、赤色ないし赤紫色 なし 非常に薄い黄色
ジヒドロカルコン類 無色から淡黄色 無色から淡黄色 なし なし
オーロン類 赤色から紫色 赤色赤紫色 なし わずかに黄色
フラバノン類 室温で黄色から橙色。加熱により深赤色から紫色。 橙色から深紅色 赤色、赤紫色、紫色および青色 赤色
フラボン類 黄色 深黄色から橙色を呈し、しばしば特異的な蛍光を発す 黄色から赤色 赤色
フラボノール類 黄色から橙色(空気酸化で褐色に変わる) 深黄色から橙色を呈し、時には蛍光を示すものがある 赤色から赤紫色 黄色から淡赤色
フラバノノール類 ごく薄い黄色から褐色に変わる 赤味がかった黄色 赤色から赤紫色 褐色がかった黄色
ロイコアントシアニン類 黄色 深紅色 塩酸でピンク、マグネシウム添加で深色化 うすいピンク
アントシアニジンとアントシアニン類 青色から紫色 黄味の強い橙色 赤色から次第に薄れて淡桃色 黄味がかった橙色
カテキン類 黄色から赤色さらに褐色になる 赤色 なし なし
イソフラボン類 黄色 黄色 黄色 淡赤色または桃色
イソフラバノン類 黄色 黄色 なし 赤色

1)アンモニア水でも可。アンモニア蒸気を植物組織切片に直接さらしても可。
2)抽出液を乾涸したもの、TLCなどで多少不純物を除いた粉末状の試料を用いると反応が明瞭になる。
3)フラボン、フラボノール、フラバノン類は、マグネシウムと塩酸とで生じる発生期の水素で還元され、それぞれの構造に対応するアントシアニン色素に変化して赤色をしめす。エタノール抽出液2〜3mlに対し濃塩酸0.5mlほどと、それに少量のMg粉末を除々に加えて時々水冷しながら行うことが望ましい。
4)3)と類似。ナトリウムアマルガムによる還元(あとで酸処理)。3)と共に、これらの反応はフラボノイド化合物の骨格中の水酸基の位置や数、糖の結合の有無により呈色がいくらか異なる。






2.アントシアニンとベタシアニン
両者はよく類似しており、呈色反応だけで区別することはなかなか困難である。現在は、電気泳動やクロマト法によって区別している。これについては黄色系のベタキサンチン色素も同様。
アントシアニンとベタシアニンの識別に用いる呈色反応としては、2M塩酸で抽出した色素溶液を100℃で5分間処理する。アントシアニンは安定した赤色を示し、処理液からアミルアルコールでアグリコンを振りとることができる。しかし、ベタシアニンは処理中に漸次褪色する。また、2M程度の水酸化ナトリウム液を抽出液に加えると、アントシアニンは青色から緑青色に変わり、次第に褪色するが、ベタシアニンは一挙に黄色にかわる。




3.カロチノイド
フラボノイドと違って、色素そのものが抽出後にきわめて褪色しやすいので、定性分析の場合にも注意が必要。

3.1濃硫酸による呈色反応
エーテル、クロロホルム、二硫化炭素のいづれかで抽出したカロチノイド色素溶液に少量の濃硫酸を静かに加えたときに、境界面および硫酸層に生じる緑色ないし青色の反応。

3.2.発煙硝酸による呈色反応
3.1.の反応で、濃硫酸の代わりに発煙硝酸を用いても同様な呈色を示す。