中国乾燥地での腐植物質の葉面散布がダイズの生育と収量に及ぼす影響

宮内陽介1)・礒田昭弘1)・李治遠2)・王培武2)
(1)千葉大学大学院園芸学研究科,2)烏魯木斉中亜干旱農業環境研究所)


要旨:乾燥地である中国新疆昌吉(2007年,2008年)と石河子(2008年)において,発酵鶏糞由来の腐植物質を初生葉展開期から開花開始期にダイズに葉面散布し,生育と収量に及ぼす影響について調査した.腐食物質の処理により茎長,節数および分枝数への影響は認められなかった.子実収量はいずれの年次・地区でも腐食物質処理により13〜32%増大した.処理によって開花数は変化しないものの,着莢率が増加し個体当たりの莢数が増加した.登熟期間中の葉面積指数,個体群成長速度および純同化率には大きな差異はなかったが,登熟後期の莢乾物重増加速度は処理によって大きくなった.CO2同化速度,光化学系IIの量子収量およびクロロフィル含量について調査したが,腐食物質葉面散布処理による効果はいずれの形質にも認められなかった.以上のことから,腐食物質に含まれる植物ホルモン様の物質により着莢率が向上し,その後の同化産物の莢への転流が促され収量が増大したものと考えられた.腐食物質の葉面散布処理は,中国乾燥地でのダイズの増収効果をもたらす技術であることが認められた.
キーワード:開花数,乾燥地,子実収量,ダイズ,着莢率,腐食物質.