水分ストレス条件下におけるダイズとワタの適応的変化 第1報.蒸散の変化と気孔開度および気孔コンダクタンスとの関係

Inamullah・礒田昭弘(千葉大学)



様々な水分条件下でのダイズとワタの適応的な変化について、蒸散、気孔、葉温およびCO2同化速度の面から検討した.ダイズはワタに比べいずれの水分処理においても低い茎流速度(蒸散)、気孔コンダクタンスとCO2同化速度、小さい気孔開度と気孔密度、そして大きい葉面積と根乾物重、高い葉温を示した.水分ストレス処理により、ダイズはワタに比べ茎流速度、蒸散速度、気孔コンダクタンスおよびCO2同化速度が減少し、葉温が上昇した.ダイズの気孔開度は水分ストレス処理により減少したが、気孔密度には影響がなかった.ワタでも水分ストレス処理により気孔開度は有意に減少した.水分ストレスに対し、ダイズは気孔コンダクタンスを低下させ蒸散を減少させることで、ワタは高い蒸散量を維持することにより対応していた.ダイズでの気孔コンダクタンスの減少は、低い根の水分吸収能力の影響で茎流速度が低下することにより起こっているものと考えられた.ワタでは、大きい茎流速度、気孔開度、そして恐らく向日運動である葉の調位運動によって高い気孔コンダクタンスが維持され、蒸散量が大きくなったものと考えられた.ワタは、このような高い気孔コンダクタンスや蒸散能力によって葉温の上昇を制御しており、このことが水分ストレス条件下でも光阻害やCO2同化速度の減少を小さくしている要因であると考えられた.