水分ストレス条件下におけるダイズとワタの適応的変化 第2報.葉温に対するCO2同化速度、クロロフィル蛍光およびフォトケミカルリフレクタンスインデックスの変化

Inamullah・礒田昭弘(千葉大学)

様々な水分条件下でのダイズとワタの適応的な変化について、CO2同化速度、光化学系(PS)のクロロフィル蛍光およびフォトケミカルリフレクタンスインデックス(PRI)の面から検討した.ダイズはワタに比べ、PSの最大量子収量(Fv/Fm)が高く、PSの実量子収量(ΔF/Fm')、CO2同化速度(AN)では小さかった.水分ストレスが大きくなるに従い、Fv/Fm、ΔF/Fm'、 AN の減少程度はワタよりダイズで大きくなった.ダイズでのΔF/Fm'の減少は、ノン・フォトケミカル・クエンチング(NPQ)の増加およびPRIの減少と有意に関係していた.水分ストレスの増大に伴い、ダイズでのみクロロフィル含有率の減少がみられ、葉温(TL)の上昇もワタよりダイズで有意に大きかった.TLは両作物ともFv/Fm、ΔF/Fm'、 AN、PRIと負の、NPQと正の高い相関を示したが、ダイズでのFv/Fm、 AN、PRIとの関係のみ有意であった.ダイズでは、水分ストレスと高葉温による光化学系の損傷を、PS活性の下方調整を伴う過剰励起エネルギーの熱消失として防いでいると考えられた.ダイズではこの防御機構に加えて、葉の避日的な調位運動によっても損傷を防いでいるものと思われた.一方ワタでは、高い蒸散能力によって葉温を低く保つことによりPSへの影響を小さくし、水分ストレスに適応しているものと考えられた.