トウキの発芽,出芽および初期成育に及ぼす種子選別の影響
ニン テイ プイッフ・ 野島 博・ 田代 亨

熱帯農業 50: 154-162

要約:トウキ(Angelica acutiloba Kitagawa)は,日本や韓国,中国,ベトナムその他のアジア諸国で生薬として用いられる多年生の薬用植物である.トウキの良質苗を得る目的で,種子の重さおよび比重による選別が発芽および閉鎖型苗生産システムでの苗の初期成長に及ぼす影響について検討した.種子発芽の適温は20℃であった.種子を重量別に選別した結果,種子重が重いほど発芽率が高まり,苗の全乾物重および根の直径が増加した.また,根/茎葉比は種子重が重くなるほど高まる傾向を示した.種子の吸水量は種子重に影響を受け,軽いものほど速やかに増加したが,平均発芽日数は長くなった.同様に,種子を比重別に選別した結果,種子比重が高いものほど発芽率と出芽率が高まり,苗の全乾物重および根の直径が増加し,初期成長量が促進した.また,根/茎葉比は種子比重が高まるほど高まる傾向を示した.以上の結果,種子の重さおよび比重による選別により,種子重は3.1mg以上,種子比重は1.12以上で苗の全乾物重が増加し良質苗が得られることが示された.

キーワードAngelica acutiloba Kitagawa, 発芽温度,種子形質,,薬用植物