アジアイネ(Oryza sativa L.)とアフリカイネ(0.glaberrima Steud.)の一年生・多年生の特性とその変異
坂上潤一.礒田昭弘・野島博・高崎康夫(千葉大学)

要旨:アジアイネ(Oryza sativa L.)の日本型,インド型とアフリカイネ(0.glaberrima Steud.)の一年生・多年生の特性を,アジアイネの日本型26品種,インド型37品種,アフリカイネ41品種を供試して,成熟後の個体の生育と生存から比較した.成熟後225日間に発生する新茎数は日本型が最も多く,アフリカイネが最も少なかった.成熟後の生存茎数は日本型が最も多く推移し,一時減少する時期があったが,その後再び増加した.インド型,アフリカイネはこのような傾向はなく,成熟後初期に増加した後滅少し続けた.成熟後の生存期間はアジアイネがアフリカイネに比べて明らかに長かった.アジアイネでは,日本型の日本産品種は枯死せず,外国産品種も二例を除いてすべてが生存していることから,日本型は多年生と考えられた.インド型の一部は成熟後の早い時期で枯死することから,品種群内に一年生と多年生が存在していると考えられた.アフリカイネでは成熟後225日目で生存していたのは1品種のみであった.このことから,アジアイネの中には一年生,多年生の変異があるのに対し,アフリカイネは基本的に一回結実一年生であると考えられた.アジアイネは一年生から多年生までを示す野生種0.rufipogonの遺伝的性質を残し,アフリカイネは一年生的性質の強い野生集団から分化したと推察された.

キーワード:アジアイネ,アフリカイネ,一回結実一年生,0.glaberrimaO. sativa,新茎数,生存,多年生.