水分ストレス条件下におけるダイズの葉の調位運動が葉温、蒸散および受光量に及ぼす影響
礒田昭弘・王培武*(作物学研究室、*石河子中亜干旱農業環境研究所)

中国新疆において、水分ストレス条件下のダイズ数品種の蒸散速度と葉温を経時的に測定し、その品種間差異と葉の調位運動との関係について検討した.4品種(青豆7232、8285-8、高肥16、東農87-138)を用い、播種から開花期の7月2日まで適宜かん水を行い、7月2日から8月12日の期間かん水処理を行った.かん水処理開始16日後に、水平に固定した葉身(葉身角度処理区)と自由に調位運動を行っている葉身(葉身角度無処理区)の葉温の経時的変化を測定した.同時にかん水区、無かん水区の1個体につき、単位葉面積当たりの茎流速度(蒸散速度)を測定した.各品種、処理区の小葉ごとの受光量も調査した.
土壌水分条件が変化することにより、葉の調位運動に加えて葉温および蒸散速度の対応が品種間で大きく異なることが認められ、葉温と密接に関係していた.葉温の制御を主に葉の調位運動で行っているタイプ(東農87-138、高肥16)、主に蒸散で行っているタイプ(青豆7232)、そして両方によっているタイプ(8285-8)が認められた.かん水区の上位2層の受光量は、青豆7232が最も大きく、次いで東農87-138、8285-8、高肥16の順でとなり、無かん水区に比べかん水区の受光量が高くなった.単位土地面積当たり受光量は、かん水区で東農87-138、8285-8が大きくなり、無かん水区で若干減少した.葉面積、乾物重は、かん水区に比べ無かん水区では、高肥16および東農87-138は大きな差がなかったが、8285-8では葉面積、乾物重は大きく減少した.青豆7232は葉群構造は大きな変化はなかったが、無かん水区の葉面積、乾物重はかん水区に比べ一回り小さくなった.以上のことから、ダイズは葉の調位運動によって水分の損失を防ぎ、受光態勢の悪化を抑えることで乾物生産を保ち、水分利用効率を大きく向上させているものと考えられた.