Oryza glaberrima Steud.系統と日本産水稲晶種(O. sativa L.の出穂後の生育と13C同化産物の転流の差異

尹榮煥・礒田昭弘・野島博・高崎康夫(千葉大学)

要旨:Oryza glaberrima Steud.(アフリカイネ)とOryza sativa L.(アジアイネ)の出穂期以降の生育と転流の様相の違いを知ろうとした.O. glaberrima2系統とO. sativa2品種をポット栽培し,出穂前から生育を調査した.出穂期から1週問ごとに45klux,30℃に設定したグロースキャビネット内の同化箱で13CO2を1時問同化処理し,植物体各部への13C分布割合を調べた.O. glaberrima2系統とO. sativa2品種の出穂期以降の生育で明らかな違いは,O. glaberrimaの方が出穂期間が長いこと,同じ葉位ではO. glaberrimaの方が葉の老化が速いこと,O. glaberrimaの方が出穂後の早い時期に穂への乾物の集積を終えることであった.穂への13C分布割合はO. glaberrimaでは出穂後1週目,O. sativaでは出穂後3−4週目に最高になり,以降は成熟に向かうに従って低下した.このことはO. glaberrimaでは登熟の早い時期に穂重の増加が大きく,以降は微増しかしないのに対し,O. sativaではもっと遅い時期まで穂重が増加するという穂への乾物集積の傾向をよく説明し,O. glaberrimaO. sativaの穂への乾物集積の経過の違いを転流の面から裏付けているものと考えられた.

キーワード:一年生,Oryza glaberrimaOryza sativa,13CO2,出穂割合,多年生,転流.