Oryza glaberrima Steud.のl年生系統とOryza sativa L.の多年生品種の出穂後の生育

高崎康夫・関陽一.野島博・礒田昭弘(千葉大学園芸学部)

要旨:イネ属植物における1年生タイプと多年生タイプの生育の特性を知ろうとして,l年生の1系統W492(Oryza glaberrima Steud.)と多年生のl品種コシヒカリ(Oryza sativa L.)を供試して,出穂期以後の生育を比較した.両系統・品種ともl/5000アールポットに個体植えし生育を調査した.出穂期以降はl週間ごとに,両系統・品種とも10個体ずつを堀取り,植物体各部の乾物重とデンプン含有率を経時的に調査した.出穂期以降の生育で,両者の間で大きな違いがみられたのは,(1)穂への乾物集積速度(2)葉面積の減少速度(3)茎+葉鞘部分のデンプン含有率(4)登熟期前後からの新しい分げつの発生程度であった.イネ科植物のl年生と多年生の違いとしてよく指摘される収穫指数については大きな違いはみられなかった.(l)〜(4)の中で(3)と(4)はイネ科植物の1年生と多年生の違いとしてこれまでにすでに報告されている.(1)の穂への乾物の集積速度と(2)の葉面積の減少速度の二つについてはl年生と多年生の違いとしてこれまでに報告されていない.イネ属における1回結実性の1年生の性質は,穂への乾物の集積速度が速いこと,葉面積の減少速度が速いことと深く結びついていると推論した.

キーワード:1回結実性1年生,l年生,Oryza glaberrima Steud., Oryza sativa L.,収穫指数,多年生,貯蔵養分,分げつ発生