TNTmips free (旧名 TNTlite)とは米MicroImages社 (http://www.microimages.com/)の業務用GISシステムであるTNTmipsの入門用無料ソフトです。製品版との違いは扱えるデータの数に制限があることと、データのエクスポートができない点だけです。それだけに、機能や使い方も複雑なので、全てを修得するにはかなりの時間がかかります。ここでは、花卉研で使う機能だけにしぼって説明します。
TNTmips freeの特徴
- ベクターとラスターの両方が扱える。
- TNTmipsのほぼすべての機能が使える。
- データベースからのデータのインポートが容易。
- スクリプトを使うことでデータの種類によってシンボルを変えることができる。
- 各種のGISデータが使えるので、国境や州境のデータが無料で利用でき、高品質な地図が描ける。
目次
- 採集地点のGPSデータを利用して分布図を作成する
- GPSデータのインポート
- GPSデータの表示
- 国境や州境を表示する
- DEM (GTOPO-30) の加工
- DEMデータから等高線を作成する
- 同じ座標系の2Dグループを重ねて表示する
- アクセント付きの文字を入力する
TNTのデータベースピンマップの機能を利用する。最も簡単にはExcelで次のようなデータを作り、dBASE IV形式で保存したものをMain->Import...でインポートする。ただし、Macintosh版のExcel v.XはdBASEエクスポートにバグがあるようなのでWindows版のExcelを使うか、Macintoshでは最新版ExcelやLibreOffice/NeoOfficeを使う。インポートするときにLINK形式にしておくと後でExcel/LibreOfficeを使ってデータの修正ができるので便利。
緯度・経度の表示形式はdd.ddddd(度の小数表記)、ddmm.mmmm(度+分の小数表記)、ddmmss.sss(度・分・秒)がよく使われる。位置が地形図上で照合しやすいのは度分秒表記だが、2点間の距離が分かりやすいのは度の小数表記。中緯度地域では緯度・経度ともに1°が約100kmなので、小数点以下1桁目は10km、2桁目は1km、3桁目は100m、4桁目は10mほどに相当する。現行のGPS精度を考えると、小数点以下6桁あれば十分である。度分秒表記の場合、1秒は約30mに相当する。データベースに記録する場合は度の小数表記が最も扱いが楽である。
データベースピンマップによる分布図には欠点もある。地図の縮尺に対して採集地点の距離が近い場合、シンボル同士が重なってしまい、下になったデータが見えないことである。この場合、ダミーデータを作って重ならないような場所に表示させるか、出来上がった地図を画像として保存し、手作業で編集する必要がある。
GPSデータサンプルファイル
ID |
LAT |
LONG |
ALT |
CLASS |
KEKKA |
2002s038 |
-32.429444 |
-61.989722 |
250 |
3 |
A |
2002s149 |
-33.091111 |
-52.477500 |
520 |
1 |
A |
2002s184 |
-31.190000 |
-56.787500 |
105 |
3 |
C |
- TNTmips freeのメインメニューからMain->Import...を選ぶ。
- 下のリストからDBASEを選ぶ。
- ImportウィンドウのImport FormatのFilterアイコンDatabase Table (一番右)を選ぶ。
- 一番上、左側のSelect Files...ボタンを押すとファイル選択ダイアログが開くので保存したdBASE形式のファイルを選んでOKボタンを押す。
- Importウィンドウに戻るので、Next...ボタンを押す。
- Import Parametersのダイアログが出るので、Link onlyのチェックを入れ、Text Encodingで日本語を使っていればShift-JIS、そうでなければASCIIを選択し、Import...ボタンを押す。
- 保存先のファイルを聞いてくるので、適当なファイルを開き、新しいオブジェクトを作る。
- Importウィンドウに戻るので、別のファイルを続けてインポートするか、Exitボタンを押して終了する。
- TNTmips freeのメインメニューからMain->Displayを選ぶ。
- Display ManagerのDisplay->OpenもしくはOpen Display...アイコンから表示したいGPSデータが含まれるようなディスプレイレイアウトを開くか、Display->Newで新たなディスプレイレイアウトを作り、必要なRasterやVectorデータを開いて投影法や表示範囲(clipping)を指定する。
- Add ->Object...もしくはAdd Database Table Pinmap...アイコンでインポートしたGPSデータを選ぶ。
- 最初に表示されるObjectタブのStyles...ボタンを押してSTDSTYLES.rvc/Symbols/basicを指定すると以下で説明する記号が使えるようになる。
- Pointタブを開いてX...にLONG、Y...にLAT、Z...にALTと設定し、FormatポップアップでDecimal Degreesを選ぶ。
- シンボルや色を設定する。スクリプトを使うと表示が自由に変えられる。形はSymbol$、色はDrawColor$で指定する。指定できる名前はそれぞれのリンクを参照。
- スクリプトを使用する場合はObjectタブのRecordポップアップとSymbolタブのSymbolポップアップをby Scriptに変更する。
- 以下にスクリプトの一例を挙げる。
XScale=2;
YScale=2;
DrawSymbol=true;
local numeric answer;
answer=false;
switch (database.CLASS) {
case 1:
Symbol$="Symbol11";
answer=true;
break;
case 2:
Symbol$="Symbol12";
answer=true;
break;
case 3:
Symbol$="Symbol13";
answer=true;
break;
}
switch (database.KEKKA) {
case "A":
DrawColor$="blue";
break;
case "B":
DrawColor$="red";
break;
case "C":
DrawColor$="green";
break;
default:
DrawColor$="black";
break;
}
return answer;
国境や州境のデータはハーバード大学のDigital Chart of the Worldからダウンロードできる。
[2013-12-02] この部分の記述はハーバード大学からダウンロードしたデータや最新版のTNTに合わせて書き換えていないので、事実と違うところがある。試行錯誤してください。
- ハーバード大学のDigital Chart of the Worldから必要な国や地域を選んで右側のDownloadにあるZipped Shapefileからデータをダウンロードする。
- ダウンロードしたデータのうち、dcwponet.shp・awcntry.shpが国境、awswrlda.shpが第1次行政区分、dcwdnnet.shp・awriv3ml.shpが河川のラインデータなので、必要なファイルをMain->Import...でインポートする。
- Importウィンドウ上部のポップアップメニューでVectorを選ぶ。
- Sourceボタンを押してダウンロードしたデータを開く。
- Coordinatesタブを押して、記録する座標の種類を設定する。通常はLat/LonのWGS84でよい。
- 一番下、左側のImportボタンを押すと変換したデータの保存先を聞いてくるので、適当なファイルを開くか作り、新しいオブジェクトを指定する。
GTOPO30はUSGSが配布している30秒メッシュの標高データで、1点は約1km四方に相当する。一つのファイルで東西40°南北50°(4800x6000点)の範囲を含む。スペースシャトルからの測量データでGTOPO30を修正したSRTM30というデータセットもあり、こちらも全く同じ手順で利用できる。
[2007.2.18] 現在配布されているGTOPO30のデータは既にSRTMのデータで修正済みのようである。
TNTmips freeで扱えるラスターは最大で614×512に限られているので、USGSからダウンロードしたDEMデータはそのままでは扱えない。そこで、TNTmips freeのインポート機能を使って、4°×4°(480x480点)のデータを切り出す。
- TNTmips freeのメインメニューからProcess->Import/Exportを選ぶ。
- Import/Exportウィンドウの一番上にあるポップアップメニューからRasterを選び、下に出てくるリストの中からDEM-GTOPO30を選ぶ。
- 一番下、左側のImportボタンを押すとファイル選択ダイアログが開くのでダウンロードしたGTOPO-30のファイルを開く。
- プロセスオプションのダイアログが出るので、ここで4°×4°の範囲を指定する。4°は480行のデータに相当するので、DEMファイルの範囲の左上(北西)を1行1列としたときの4°×4°の範囲を行と列で入力する。例えば、W060S10の場合、1行1列は10°S、60°Wなので、26-30°S、52-48°Wの範囲は1921-2400行、1441-1920列となる。
- 左下のImportボタンを押すと保存先のファイルを聞いてくるので、適当なファイルを開き、新しいオブジェクトを作る。オブジェクトの名前はGTOPO30の形式に従って北西の座標を元にすればよいだろう。
- オプションのダイアログに戻るので範囲を変えてインポートを繰り返す。終了するときはCloseボタンを押す。
以下のステップはDEMを直接表示しない場合は必要ない。(例えば、等高線を作るためだけにDEMをインポートする場合。)きっと、もっと簡単にできる方法があると思うが、今のところこれでうまく行っている。スクリプトを書けばいいような気もするが。
- Import/Exportウィンドウを閉じ、メインメニューからDisplayを選び、New2DGroupボタンを押し、作ったオブジェクトを開く。
- Spacial Data Editorのツールアイコンを押してメニューからラスターヒストグラムを選び、標高の最低・最高値を控えておく。
- Raster Layer Controlsを開き、Objectタブのカラーパレットの編集ボタンを押す。
- カラーパレット編集ウィンドウのFileメニューからOpenを選び、適当なカラーパレットを開く。
- 標高の最低値と最高値の差の1/256を1段階として目的の標高幅に応じてパレットを色分けする。例えば最低値が96mで最高値が1249mのデータを標高200mで色分けする場合、パレットの1マスは4.5mに相当するので、96-200mはindex 0-23、201-400mは24-67、等となる。
- できあがったカラーパレットを編集中のオブジェクトの中に保存する。次にこのラスターオブジェクトを開いたときにこのパレットが自動的に適用される。
- メインメニューからProcess->Surface Modeling...を選ぶ。
- ウィンドウがいくつか開くが、そのうちのSurface ModelingウィンドウのOperation:ポップアップからContouring...を選ぶ。
- Input Objectボタンを押して、目的のDEMデータを選ぶ。
- Parameterタブを押して、開始標高と間隔を設定する。
- 上の方に3つあるアイコンのうち、右のRunボタンを押して、プロセスを開始する。
- 保存先を聞いてくるので、適当なファイルを開き、新しいオブジェクトを作る。うまくいけばViewウィンドウに結果の等高線が黄色の線で示される。
- 続けて別の設定の等高線や別のDEMデータを処理するときは設定を変更してRunボタンを押す。新しいInput Objectを指定すると、今扱っているデータを閉じるかどうか聞いてくるので、そのようにする。
TNTmips freeでは一つの2Dグループには20オブジェクトしか表示できない(と思う)。そこで、広い範囲、例えばアルゼンチン全域のDEMに州境とデータベースピンマップを重ねて表示する場合などは複数のグループを作り、それを同じ座標系で重ねる必要がある。また、情報の種類ごとにグループを作っておくと特定の情報の表示の有無が簡単に変えられる利点もある。
- メインメニューからDisplayを選び、新しいハードコピーレイアウトを作成する。デフォルトで作成されるGroup1というグループに中心となるオブジェクトを表示し、適当な投影法、スケールやクリッピング領域を指定する。
- べつのグループを作成し、オブジェクトコントロールウィンドウのLayoutタブを開く。
- VerticalまたはHorizontal AttachmentのTo...ポップアップでGroup1を指定し、その下のポップアップでGeographicを選ぶと、このグループにGroup1の投影法やスケールが自動的に適用される。クリッピング領域はこのグループに対して独立に設定できる。
次の手順でアクセント付きの文字(éなど)を入力できる。
- テキスト入力中にF2を押すとカーソルが四角に変わり、特殊文字入力モードになる。
- e ' スペースの順にキーを押すとéが現れる。スペースの前の2文字の組み合わせはTNTのプログラムフォルダの中のinpmthd.txtというファイルに記載されている。代表的なものを下に示した。
- もう一度F2を押すと通常の文字入力に戻る。
アクセント付き文字のキー組み合わせ
文字 |
キー組み合わせ |
á |
a ' |
è |
e ! |
ü |
u : |
ñ |
n ~ |