2006年2月16日現在
1994–2000 | 2001–現在
16. Tatsuzawa, F., T. Ando, N. Saito, Y. Tsunashima, H. Kokubun, H. Watanabe, G. Hashimoto, K. Asakura, R. Hara, H. Seki. 2000. Acylated Delphinidin-3-rutinoside-5-glucoside from Petunia reitzii. Phytochemistry 55: 913–917.
P. reitziiは普通、アシル化していないデルフィニジンを主要色素とするが、その変異個体の中に、アシル化したデルフィニジンを作るものを発見し、そのアントシアニンを同定した論文。やはりジアシル化した複雑な新規アントシアニンを含んでおり、今後品種の花色を更に豊富にする育種素材として期待できる可能性を示唆した。この種の典型的個体は、ペチュニア品種で解明されたアントシアニン合成系路では合成し得ないアントシアニン(delphihidin- 3- rutinoside-5- glucoside)を主成分とするが、この変異も同様に特異な合成系をもつと示唆された。
15. Ando, T., F. Tatsuzawa, N. Saito, M. Takahashi, Y. Tsunashima, H. Numajiri, H. Watanabe, H. Kokubun, R. Hara, H. Seki, G. Hashimoto. 2000. Differences in the floral anthocyanin content of red petunias and Petunia exserta. Phytochemistry 54: 495–501.
1999年にペチュニア野生種の花冠アントシアニンを同定した論文を著したが(下記11)、ほぼ同時にアメリカの研究者(Griesbach)がP. exserta のアントシアニン組成を、赤花品種の組成と同一とする、安藤らの結果と全く異なる論文を発表した。このことを受けて、赤花品種とP. exsertaのアントシアニンをHPLC上で比較し、明らかにピークが分裂することから、色素は同一ではないことを示し、また赤花品種の花に含まれるアントシアニンを同定しなおして、過去の論文の誤りを正した。
14. Mishiba, K., T. Ando, M. Mii, H. Watanabe, H. Kokubun, G. Hashimoto, E. Marchesi. 2000. Nuclear DNA content as an index character discriminating taxa in the genus Petunia sensu Jussieu (Solanaceae). Annals of Botany 85: 665–673.
広義のペチュニア属には互いに交雑できない3群があって、それらは種子の表面形態で区別できる事実を報告したが、この論文は更にフローサイトメータにより核DNA量を計測すると、2n=18種の中の2群が容易に判別できる様を示したもの。同じ2n=18種でありながら、互いに交雑できないのは、この核DNA量の著しい違い(40%も異なる)が一因と考えられた。また、核の被染性の違いから、2n=14種と2n=18種は、核DNAの組成(AT/GC比)が異なる様が示唆され、これも交雑を困難にしている一因と思われた。
13. Kokubun, H., T. Ando, H. Watanabe, T. Tsukamoto, E. Marchesi. 1999. Floral Morphology of F1 and F2 progenies between two subspecies of Petunia axillaris (Solanaceae). Acta Phytotaxonomia et Geobotanica 50: 207–219.
既に報告したウルグアイにおける Petunia axillaris subsp. axillaris と subsp. parodii の中間型の由来について考察するため,野生種子由来の subsp. axillaris と subsp. parodii から正逆組み合わせのF1,さらにF2個体を育成し,花器形態の遺伝様式を調査した。 特に,ウルグアイの2亜種を区別する重要な形質でありながら,今まで無視されてきた雄ずいの状態(2強または4強)に注目し,以前の研究者にも取り上げられている花筒長および花冠径とともに計測した。また,花筒長/花冠径比と,下記5の論文の判別関数Z12による判別得点を2次変数として分析に供した。 その結果,各形質は量的に遺伝していたが,4強雄ずいはF1個体には現われず,F2になって初めて出現し,あたかも劣性遺伝子のようにふるまった。Subsp. axillaris は subsp. parodii よりも分散が大きく,それはsubsp. axillaris を母親にしたF1個体にも継承された。F1,F2個体とも,計測値はおおむね両親の値の範囲に分布した。 正逆の組み合わせを比較した場合,計測値は母親の値に近く,特にsubsp. axillaris を母親とした場合,subsp. axillaris とF1・F2個体の値の分布に重なりが見られた。このことは判別得点についても言え,前報で subsp. axillaris と判定された群落の中にも subsp. parodii の遺伝子が浸透している可能性が示唆された。F2個体では花筒が長いほど4強雄ずいに近くなる(subsp. parodii に似る)傾向が示された。 Colonia州のLa Plata川沿いに見られた中間型は本研究で得られたF2個体の一部に似ており、この中間型が雑種起源である可能性が認められたが、FloresおよびSoriano州のNegro川下流域に見られた小輪の花をもつ中間型は subsp. axillaris と subsp. parodii の交雑だけで説明することは難しいと思われた。
12. Tatsuzawa, F., T. Ando, N. Saito, Y. Tsunashima, H. Kokubun, H. Watanabe, G. Hashimoto, K. Asakura, R. Hara, H. Seki. 1999. Acylated malvidin 3-rutinosides in dusky flowers of Petunia integrifolia subsp. inflata. Phytochemistry 52: 351–355.
野生のP. inflataの花色変異の中にくすんだ色彩をもつ個体があり、このアントシアニン花色素を調べた結果、多くの新規アントシアニンが発見された。いずれも5位のブドウ糖を欠いていたため、5-glucosyltransferaseの発現が抑制された変異であることが推定された。5位の糖がなくとも、その後のアシル化、メチル化が進行するものの、正常な発色のためには5位の糖が必要であることが示唆された。
11. Ando, T., N. Saito, F. Tatsuzawa, T. Kakefuda, K. Yamakage, E. Ohtani, M. Koshi-ishi, Y. Matsusake, H. Kokubun, H. Watanabe, T. Tsukamoto, Y. Ueda, G. Hashimoto, E. Marchesi, K. Asakura, R. Hara and H. Seki. 1999. Floral anthocyanins in wild taxa of Petunia (Solanaceae). Biochemical Systematics and Ecology 27: 623–650.
Petunia属の全種の花に含まれるアントシアニン色素を同定した論文。この論文によって、ペチュニア野生種のアントシアニンの全貌が明らかになり、全てデルフィニジン系色素であるが、中にはシアニジンを僅かに含む種、デルフィニジンを主要色素としながら赤く発色する奇妙な種、既知のアントシアニン合成系では合成しえない色素を含む種、複雑なジアシルアントシアニンを含む種など、極めて多様な姿が浮かび上がった。
10. Tsukamoto, T., T. Ando, H. Kokubun, H. Watanabe, M. Masada, X. Zhu, E. Marchesi, T-h. Kao. 1999. Breakdown of self-incompatibility in a natural population of Petunia axillaris (Solanaceae) in Uruguay containing both self-incompatible and self-compatible plants. Sex. Plant Reprod. 12: 6–13.
下記7の論文で、Petunia axillarisの亜種axillarisは基本的に自家不和合であるが、群落の中には自家和合個体を交える混在群落が存在する事実を報告したが、この論文はその一つであるU1群落を対象として、育成個体のS遺伝子型を調べ、混在する自家和合個体がS13と名付けた特定のS遺伝子の花柱側発現が抑制されたものであることを示し、これを花柱部分突然変異と呼び、花柱部分のS遺伝子の発現メカニズムを一歩明らかにする格好の素材であることを示した。
9. Watanabe, H., T. Ando, E. Nishino, H. Kokubun, T. Tsukamoto, G. Hashimoto and E. Marchesi. 1999. Three groups of species in Petunia sensu Jussieu (Solanaceae) inferred from the intact seed morphology. Amer. J. Bot. 86: 302–305.
交雑親和性の研究から、広義のペチュニア属には互いに交雑できない3群の存在を示したが、この論文は、この3群が種子の表面形態を走査電顕観察すると容易に区別できる事実を報告したもの。2n=14種は、種子表面の隔壁とその周囲の隆起がともに波形、2n=18種のP. pygmaeaとP. parvifloraは隔壁が波形だが、周囲の隆起は直線上、その他の2n=18種は、隔壁と周囲の隆起ともに直線状であり、明確に区別できた。このことにより、予め交雑可能か否かが判定できるこことなった。
8. Tsukamoto, T., T. Ando, H. Kokubun, H. Watanabe, R. Tanaka, G. Hashimoto, E. Marchesi and T. -h. Kao. 1998. Differentiation in the status of self-incompatibility among all natural taxa of Petunia (Solanaceae). Acta Phytotax. Geobot. 49: 115–133.
この論文は、ペチュニア属全種に対してその自家(不)和合性を調査したもので、この属は基本的に自家不和合であるが、4分類群が自家和合性である事実を明らかにした。これら自家和合種は、降水量の少ない南米大陸の内陸や、雨の当たらない洞窟に生じており、降水量が少なく、植生が貧弱で、訪花昆虫が活動しにくい環境に適応した姿であることを明らかにした。またP. axillarisの3亜種の中で、自家不和合性は亜種axillarisだけであることも示し、P. axillarisを自家不和合としたり、自家和合としたりする過去の論文の矛盾を解いた。
7. Ando, T., T. Tsukamoto, N. Akiba, H. Kokubun, H. Watanabe, Y. Ueda and E. Marchesi. 1998. Differentiation in the degree of self-incompatibility in Petunia axillaris (Solanaceae) occurring in Uruguay. Acta Phytotax. Geobot. 49: 37–47.
ペチュニア品種の歴史的母親であるP. axillarisは南米ウルグアイあるいはその周囲に由来することが推察されているが、そのウルグアイにはその2亜種が隔離分布する様をこれまで報告してきた。この論文は、ウルグアイ全域の群落から採集された植物に対して、その自家(不)和合性を調査したものである。基本的に亜種axillarisは自家不和合であり、亜種parodiiは自家和合であった。但し、亜種axillarisの群落の中には、多くの自家不和合個体の中に自家和合個体を交える混在群落が存在し、自家不和合性の崩壊現象の解明により自家不和合性のメカニズムを研究する格好の素材を提供するものと考えた。
6. Tsukamoto, T., T. Ando, M. Kurata, H. Watanabe, H. Kokubun, G. Hashimoto and E. Marchesi. 1998. Resurrection of Petunia occidentalis R. E. Fr. (Solanaceae) inferred from a cross compatibility study. J. Jpn. Bot. 73: 15–21.
Wijsman (1990) はP. occidentalis 等をP. integrifoliaの亜種としたが、彼の見解を確認する目的で、同種の亜種間の交雑親和性を調査した結果、P. occidentalisは明らかにP. integrifoliaとは異なる交雑親和性を示すことを示し、むしろこの種はP. axillarisに近縁と考えられる事実を報告した。形態的な比較を行った共同研究者の以前の結果と合わせて、P. occidentalisを独立種として復活する提言を行った。
5. Kokubun, H., T. Ando, S. Kohyama, H. Watanabe, T. Tsukamoto and E. Marchesi. 1997. Distribution of intermediate forms of Petunia axillaris subsp. axillaris and subsp. parodii (Solanaceae) in Uruguay as revealed by discriminant analysis. Acta Phytotax. Geobot. 48: 173–185.
前2報では、ウルグアイ内の Petunia axillaris 2亜種がおおむねリオ・ネグロ川を境に住み分けており、リオ・ネグロ川下流域とラ・プラタ川沿いにはその中間型も見られる事を示した。今回は、2亜種間の遺伝子浸透をより明確にするために中間型の分布に注目して、ウルグアイ内102地点で採集された種子由来の植物の形態の判別分析を行った。判別分析の典型地として中間型の見られた地域から南北に離れた地点を選んだ。 subsp. axillaris の3郡12地点、subsp. parodii の典型地としてArtigas 郡とSalto 郡から16地点を使用した。ステップワイズ判別分析により得られた5判別関数に全102地点の計測値を代入した亜種の判別により、2亜種がおおむねリオ・ネグロ川を境として分布することが再確認されたが、中間型とされたものの分布は前報の結果よりも広く、リオ・ネグロ川と平行した南側の地域とSoliano 郡全域、Colonia 郡のラ・プラタ川沿岸に見られた。このように、中間型の分布は明確になり、今後の遺伝資源解析のための基礎的データの一つを提供すると思われる。
4. Watanabe, H., T. Ando, S. Iida, A. Suzuki, K. Buto, T. Tsukamoto, H. Kokubun, G. Hashimoto and E. Marchesi. 1997. Cross compatibility of Petunia pubescens and P. pygmaea with native taxa of Petunia. J. Japan. Soc. Hort. Sci. 66: 607–612.
ペチュニアの2n=18種(P. pubescens)を母親とし、広義のペチュニア全種との交雑親和性を調査したところ、2n=14種が全て交雑できないだけでなく、2n=18種の中にも交雑できない種があることを示し、広義のペチュニア属は互いに交雑できない3群(2n=14種、P. pygmaeaとP. parviflora、その他の2n=18種)から構成される事実を明らかにした。
3. Tatsuzawa, F., M. Koshi-ishi, F. Ohtani, T. Ando, H. Watanabe, H. Kokubun, M. Yokoi, G. Hashimoto, H. Seki, N. Saito. and T. Honda. 1997. Diacylated Malvidin 3-rutinoside-5-glucosides from the flowers of Petunia guarapuavensis. Heterocycles 45: 1197–1202.
新種であるP. guarapuavensisの花から、新規のアントシアニン色素(ジアシル化Malvidin 3-rutinoside-5-glucoside)を同定した。ペチュニアの花にはこれまでモノアシルアントシアニンが同定されているが、ジアシルアントシアニンは初めて報告された。
2. Ando, T., S. Iida, H. Kokubun, Y. Ueda and E. Marchesi. 1995. Distribution of Petunia axillaris sensu lato in Uruguay as revealed by discriminant analysis of live plants. J. Japan. Soc. Hort. Sci. 64: 381–391.
ペチュニア品種の改良はPetunia axillarisとP. integrifoliaの交雑から始まった。片親のP. axillarisは当初ウルグアイで採取されたが、そのウルグアイ内自生地を踏査・観察した結果、南東部(MaldonadoとRocha郡)には典型的なsubsp. axillaris (短花筒・2強雄ずい)が、また北西部(ArtigasとSalto郡)には典型的なsubsp. parodii(長花筒・等長雄ずい)が分布していた。 乾燥標本種子由来の植物について30形質を計測し、両地域産植物と比較したところ、18形質値に有意差があった。これらの形質をステップワイズ判別分析に供して7つの判別関数を得た。さらに、全国49ヶ所に由来する植物の形質値を判別関数に代入して亜種を判定した。 その結果、ウルグアイ中央部を流れるネグロ川を境として、おおむねその南東部にsubsp. axillaris が、北西部にsubsp. parodiiが棲み分けていることが示された。南西部のネグロ川下流には両亜種の中間的形質が認められ、またColonia郡には典型的なものより花筒の長いsubsp. axillarisが認められた。 以前の標本研究からは、ラ・プラタ河西岸で両亜種の形質が2次遷移している可能性が示唆されていたが、その対岸であるウルグアイ南西部でも同様のことが起こっている可能性が示された。
1. Ando, T., S. Iida, H. Kokubun, Y. Ueda and E. Marchesi. 1994. Distribution of infraspecific taxa of Petunia axillaris (Solanaceae) in Uruguay as revealed by discriminant analyses. Acta Phytotax. Geobot. 45: 95–109.
ペチュニア品種の改良は、1834年のPetunia axillarisとP. integrifoliaの交雑に始まる。少なくとも当初はどちらもウルグアイ産のものが使われたことから、品種の遺伝的背景を解析するには、ウルグアイ産の両種の実態を解析することは有意義であろう。本報では、まずウルグアイ内にP. axillarisの2亜種の存在を見いだし、その分布状況を調べた。 5季に渡る実地踏査の結果、ウルグアイ南東部のCanelonesおよびMaldonado、Montevideoの3郡には、花冠が大きく、花筒が短く、2強雄ずいをもつ亜種axillarisが、北西部のArtigas、Salto両郡には、花冠が小さく、花筒が長く、等長雄ずいをもつ亜種parodiiがそれぞれ分布していることが分かった。これら計5郡産の60標本から、花筒長、花冠縁部長、花茎長、がく裂片長、花筒長/花冠縁部長の5形質を計測し、ステップワイズ判別分析により両亜種の判別関数を得た。 これに他郡産標本の値を代入して、ウルグアイ全域からの計174地点分の標本を判定した。ウルグアイ中央部を流れるネグロ川を境として、南東部に亜種axillarisが、北西部に亜種parodiiが分布していたが、境界付近の南西部には判定を保留すべきものが認められ、そこで形態が遷移している可能性が示唆された。
1. Ando, T., N. Saito, F. Tatsuzawa, T. Kakefuda, K. Yamakage, E. Ohtani, M. Koshi-ishi, Y. Matsusake, H. Kokubun, H. Watanabe, T. Tsukamoto, Y. Ueda, G. Hashimoto, E. Marchesi. 1999. HPLC profiles of floral anthocyanins in the native taxa of Petunia (Solanaceae). Tech. Bull. Fac. Hort. Chiba Univ. 53: 135–144.
1. 國分 尚 (1998).邦訳:温室の設計と設備、発芽施設(プラグのすべて.安藤敏夫監修、ほか13名共訳.ケー・アイ・エス、豊明.原著:R.C. Styer, D.S. Koranski (1997). Plug and transplant production: a grower's guide).
2001年1月14日作成、2007年2月16日更新
國分 尚 (Hisashi Kokubun)