2004年9月12日
キリの分類については多くの植物学者が頭を悩ませてきました。確かに花や種子の形態からするとゴマノハグサ科のようであり、近年はこの分類で安定していましたが、高木になることなどからこれに疑問を感じている学者も多くいました。
最近のDNAの分析によると、キリはキリ属だけで独立したキリ科とするのが適当です。実は、ゴマノハグサ科はDNAの情報によって最も変化しつつある科の1つです。これまでゴマノハグサ科とされていた植物はいくつかの科に再分類されるようです。そのうちでもキリは独立して1つの科となりますが、これに最も近縁なのはハマウツボ科(シオガマギクはここに移動します)とハエドクソウ科(園芸植物のミムルスはここに移動します)で、さらにその隣にシソ科やノウゼンカズラ科、クマツヅラ科などがあり、ゴマノハグサ科の中心はさらに遠くに位置します。
この分野は新しいデータが次々に追加されていますので、かなり流動的な面もあります。数年後には新たな見解が登場する可能性もありますが、ここで述べた分類はDNAだけでなく他の形質でも支持されていますので、完全にひっくり返ることはないと思います。キリの場合もその形態をゴマノハグサ科やノウゼンカズラ科に当てはめようとしたために無理が生じていたわけで、全く独立したものであると考えれば納得がいくのではないでしょうか。
Olmstead, R.G. 2002. Whatever happened to the Scrophulariaceae? Fremontia 30 (2): 13–22.
Olmstead, R.G., C.W. dePamphilis, A.D. Wolfe, N.D. Young, W.J. Elisons, and P.A. Reeves. 2001. Disintegration of the Scrophulariaceae. American Journal of Botany 88: 348–361.
2004年9月12日作成、2004年11月12日更新
國分 尚