ナシ赤星病菌 〜ビャクシン編〜

 

はじめに、 “ナシ赤星病” と “ビャクシンさび病” は同じ菌が引き起こす病害なのです。菌の学名はGymnosporangium asiaticumといいます。担子菌類です。今回は、この菌がビャクシンに寄生して引き起こすビャクシンさび病を紹介します。ビャクシンは下の写真のような植物で、庭などに植えられるコニファー(針葉樹)の一種です。品種によってはイブキとかネズと呼ばれることもあります。この菌は、秋〜春はビャクシンに寄生して担子胞子(小生子とも)を飛散させ、これが春から初夏にかけてナシに感染し、ナシ赤星病を引き起こします。ナシ赤星病はナシにとっては非常に注意すべき重要病害ですので、ナシの産地ではビャクシンの栽培を禁止しています。一般的に、担子胞子の飛散する範囲は1.5〜2Km程度といわれます。従って、ナシ農園の多い地域を中心にした半径1.5〜2Kmの範囲で栽培が規制されるのが一般的なようです。ナシの産地にお住まいの方は注意して下さい。ちなみに千葉大学園芸学部のある松戸市では、秋山、高塚新田、松飛台、金ヶ作、五香、六実などを中心とした市内東部地区がビャクシン栽培の禁止地区になっています。

 

早ければ2月下旬あたりから、遅ければ4月中旬くらいまでの期間に、ビャクシンの葉の上に鉄の赤さびのような塊が見えることがあります(下の写真)。これがビャクシンさび病の症状(標徴)です。病気とはいえ、これがビャクシンを枯らせることはまずありませんので、ビャクシンにとっての害にはなりません。

 

上に示したような赤さび色の塊は、実は冬胞子堆と呼ばれる菌の組織です。冬胞子堆は春の雨に濡れると水分を吸って大きく膨潤し、ゼリー状の塊に変身します。この時、冬胞子堆の中にある冬胞子が活動を開始します。

 

膨潤した冬胞子堆を少しかき取ってスライドグラスに置き、カバーグラスをかけて顕微鏡で観察します。すると、菌の冬胞子、冬胞子から伸びる発芽管、そして発芽管が発達して担子器になる様子が観察できます。担子器にある突起の上にひとつずつ担子胞子が形成され、これが飛散してナシへと伝染します。ナシへの伝染は主に4〜5月頃に行われ、5〜6月にはもうナシの葉に赤星病の症状が現れてきます。

 



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