Verticillium属菌の宿主範囲を 決定する遺伝因子の研究

Verticillium属 菌とは?


次の表に示すように、Verticillium属 の植物病原菌では種や菌株(系統)ごとに感染できる植物の種類(宿主範囲といいます)が異なっています。表では、病原性を示す場合を+、示さない場合を− で示しています。

次の写真のように、ナスにV. dahliaeを接種すると激しく発病しますが(右側)、V. longisporumを接種しても全く発病しません(左 側)。

このような種や系統による病原性の違いは、それぞれの菌が持つ遺伝子の違いに起因すると考えられま す。そこで当研究室では、病原性の異なる菌株同士を交雑して、そのゲノムを解析する ことで病原性を決定する遺伝子を探索しています。次の模式図のように、ある植物に病原性を示す菌と示さない菌を交雑して得られる雑種には、病原性を示す菌 と示さない菌がいます。そこで、病原性を示す雑種だけが持つ染色体を見つけることができれば、その染色体上に病原性決定遺伝子が存在する可能性がありま す。各染色体には「DNAマーカー」と呼ばれる目印(模式図の赤い★)があるため、これを指標として染色体の探索を行います。現在までに、トマトおよび ピーマンに対する病原性を決定していると思われる染色体の特定に成功しています。




◆植物病害の発生における環境条件の影響に関する研究

施設園芸で発生しやすいキュウリべと病やキュウリ褐斑病などを対象に、温度・湿度などの環境条件が菌 の感染や発病、二次的な蔓延にどのような影響を与えるかを調査しています。

キュウリべと病は、卵 菌類Pseudoperonospora cubensisが引き起こす病害です。本菌の主な伝染源は分生子(遊走子のう)です。遊走子の うが水に濡れると、中から遊走子と呼ばれる“泳ぐ胞子”が出てきます。遊走子には2本の鞭毛があって水の 中をしばらく泳ぐことができますが、やがて動かなくなり、“被のう胞子”になります。被のう胞子が発芽してキュウリの気孔から侵入すると、菌は吸器により 植物細胞の栄養を吸収しながら、細胞間隙に蔓延します。その後、環境条件が整うと気孔から分生子柄を外に出し、分生子を形成します。新 たに形成された分生子が飛散して、周囲に病気を拡げる伝染源となります。菌の感染・蔓延に関する生態と環境条件の関係を調査すること で、病気の発生を防ぐヒントを得ることができます。






























国内に発生した新規病害の性状に関 する研究

今まで国内で報告されたことがない新しい病害が発生することがあります。時として、海外を含めて も全く 報告がない、世界初の新病害が発生することもあります。そのような病害および病原菌の性状を明らかにして、病気の防除方法を考えます。新規病害の例とし て、カラー斑点病(世界初)や、レタス黒根病(日本初)などがあります。



レタス黒根病は北米や豪州で報告されていましたが、日本では近年突然発生しました。学術的には「なぜ 突然発生したのか?」を調査することにも意義がありますが、新しく発生した病害の防除法を考えることが重要です。幸いにも、レタスの品種によっては黒根病に強い抵抗性を示す ことが確認できたため、抵抗性品種を用いた防除が有効と考えられます。また、DNAを用いて黒根病菌を検出・同定するための技術の開発なども行っていま す。


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