Taphrina属菌 

子のう菌類の一種であるTaphrina(タフリナ)属菌は、サクラてんぐ巣病(病原菌:T. wiesneri)やモモ縮葉病(病原菌:T. deformans)、ウメ縮葉病(病原菌:T. mume)などを引き起こします。本菌は宿主組織内では菌糸状の生育をしますが、人工培地上で培養した場合は酵母状の生育(出芽)をします。このように二つの生育形態を示すことを二形成といいます。

T. wiesneriによるサクラてんぐ巣病。樹の一部分だけ枝が叢生し、一見するとヤドリギのようにも見えます。この部分は花がつかず、葉はやがて褐変して枯れます。褐変しはじめた葉の表面には白い粉が見られますが、これは菌の子実層です。日本では“天狗の巣”に例えられますが、西洋では“魔女のホウキ(witch's broom)”と呼ばれます。このような病変の原因は、感染した菌が生産する植物ホルモン(インドール酢酸,サイトカイニン)です。

T. deformansによるモモ縮葉病。菌が感染した葉は正常な葉に比べて肥厚し、変形します。感染葉の表面には、サクラてんぐ巣病の場合と同じように白い粉状の子実層が現れます。

↑子実層を形成した葉を薄くスライスして顕微鏡で観察すると、子のうが観察されます。最初の三つはT.wiesneriの、次の二つはT. deformansの子のうです。子のうの中に丸い子のう胞子が入っています。Taphrina属菌は子のう殻などの子のう果を形成せず、宿主組織上に露出した子のうを形成します。このような子のうを裸生子のうと呼びます。

↑子のう胞子は、子のう内あるいは外で出芽を繰り返して多数の出芽胞子になります。これが第二次伝染源となります。



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