うどんこ病菌 〜子のう果編〜

暖かい時期は、うどんこ病菌は宿主植物の葉の上で旺盛に生育し、分生胞子を飛ばして感染を拡大させます。しかし、秋も深まって次第に寒くなると、冬を越すための準備に取りかかります。この時期、白い病斑を生じていた葉の表面を注意深く見ると、とても小さい黒い粒々を見付けることができます。これは子のう果と呼ばれる器官です。うどんこ病菌の場合、閉子のう殻と呼ばれるタイプの子のう果を作ります。

 

↑白い病斑を形成していた葉の表面に、黒いツブツブが見られます。これが閉子のう殻です。

 

葉の表面に付着した閉子のう殻をそのまま顕微鏡で観察してみると、黒くて丸い閉子のう殻の周りに“毛”が生えているのがわかります。これは付属糸です。

閉子のう殻を掻き取って観察すると、付属糸の先端は複雑な形状をしているのがわかります。この形状はうどんこ病菌の種類ごとに異なるため、分類の指標のひとつにされています。ちなみに下の最初の写真はハナミズキうどんこ病菌、次はエノキうどんこ病菌です。うどんこ病はどの植物でも同じような病徴を呈しますが、宿主植物の種類ごとに菌の種類も異なります。ですから、大切に育てているバラの近くにうどんこ病にかかったキュウリがあっても安心して下さい。キュウリのうどんこ病菌がバラに感染することは決してありませんので。このように、菌ごとに感染する植物の種類が決まっている性質のことを、宿主特異性と言います。

閉子のう殻は硬くて黒い殻なのですが、この中には子のうと呼ばれる袋に包まれた胞子が入っています。この胞子を子のう胞子と呼びます。子のう胞子は、有性生殖により形成される有性胞子です。うどんこ病菌は子のう菌類というグループに属していますが、子のうおよび子のう胞子を形成するのが子のう菌類の特徴です。うどんこ病菌は閉子のう殻の状態で冬を越えます。硬い殻に守られて冬を越えた子のう胞子は、次の春、第一次伝染源(その年の最初の伝染源)となります。

↑閉子のう殻を圧し潰すと、“子のう”と呼ばれる袋に入った“子のう胞子”が出てきます。

 

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