園芸学部応用生命化学科 / 大学院園芸学研究科


生物化学研究室

Biochemistry Lab.

宮原 平 講師

 植物色素は緑色のクロロフィル、黄色から赤色を示すカロテノイド、同じく黄色から赤色のベタレイン、さらに赤色から青色までを示すアントシアニンが一般的に知られています。生体内ではこれらの構造に種々の有機酸や糖などが修飾されることで様々な色合いを呈することが示されています。さらに細胞内環境や共存物質の影響により、普段みなさんが見ている多種多様な植物の色が生み出されています。


 私の研究ではアントシアニンがどのように様々な色合いを呈しているのか、生体内ではどのようにその構造が作られているのか、この仕組みを解き明かすことを目的としています。実生活においてはアントシアニンは花の色や、紅葉など目で見て楽しむものから、食用色素や健康機能食品の素材として様々な利用がされています。庭や駅前の花壇、街路樹またはスーパーやコンビニの食べ物やジュースなどで目にしない日はないほどにアントシアニンはみなさんの生活に密接しています。しかし、一言でアントシアニンと言っても、植物種によってその色や構造は様々であり、アントシアニンの生合成経路が全て明らかになっている植物は限られた一部のみとなっています。特にアントシアニンを有機酸や糖で修飾する酵素については依然として不明な点が多く、まだまだ謎が多い研究テーマです。

左図はアントシアニンの基本骨格であるアントシアニジンの合成経路です。ここでは一般的なアントシアニジンであるシアニジン、ペラルゴニジン、デルフィニジンを示しています。それぞれの構造が示す色調は、一部例外がありますが、シアニジンが朱色から紫色、ペラルゴニジンが赤色、デルフィニジンが紫色から青色となります。


アントシアニンを作る植物種であれば基本的にここに示している酵素群(矢印のとなりの略号が酵素名)によりアントシアニジンが合成されます。


アントシアニジンに有機酸や糖が修飾した構造をアントシアニンと呼びます。

下図は植物種によりアントシアニンの構造が異なることを示しています。赤色で示してある構造が基本骨格であるアントシアニジンの部分です。どの植物種においてもアントシアニジンまでは上図の代謝経路により合成されます。一方で、それ以降の修飾についてはその植物種特有の修飾酵素が働くことにより、その植物種特有の様々な色合いが生み出されています。


これまでの研究から、アントシアニンの修飾が多岐に渡るほど色彩に深みが生まれ、その構造も安定化することが知られています。


これらの修飾を担う酵素遺伝子を同定することで、新しい色彩の開発や安定した食用色素の開発が期待されます。

私の研究では、デルフィニウムをメインとして研究を進めております。①デルフィニウムではどのような酵素が機能してアントシアニン構造が合成されているのか、②異なる花色の品種においてそれらの酵素遺伝子の発現や遺伝子配列がどのように花色に影響を与えているのか、③ 上記①と②の情報からどのような代謝経路をもつ品種をつくることで狙った花色が得られるのかその設計をする、ということを解析目的として育種家の方と新しい花色の創造を目指しています。

旧薬草園での作業記録