温帯林における蘚苔類の分布と森林植生との関係

温帯林内に分布する蘚苔類の種類はとても多いことが知られています. しかし,それぞれの種の分布量は少なく,樹幹,岩,倒木,土など, 様々な基質上に多種類の蘚苔類が複雑に分布しています. そのため,実際にどのような場所で蘚苔類の種数が多くなるのか, その実態について詳しいことは明らかになっていません. そこで,色々なタイプの森林植生が分布している筑波山を含む周辺地域において, 蘚苔類の種数が多い場所の特徴を明らかにすることを目的とした調査を行いました.


【調査地の様子】
筑波山の森林内には,たくさんの種類の蘚苔類が分布しています. この写真は山頂近くで見られるブナ林です. ブナの樹幹にはミヤマシッポゴケ,カラヤスデゴケなど, ミズナラの樹幹にはヤマトコミミゴケ,ヒメコクサゴケなどが生育しています. それに対して林床の岩上にはチヂミバコブゴケ,トヤマシノブゴケなど, 倒木上には,イトハイゴケ,ツツソロイゴケなど,土上にはコウヤノマンネングサ, オオスギゴケなどが生育しています.


400uの方形区を設定し,方形区内に出現した高木層,亜高木層,低木層の 全樹木の種名と被度を記録しました. 方形区内に出現した樹幹着生蘚苔類については, 出現種ごとに着生樹木の種名ならびに着生部位(主幹,幹基部)を記録しました.
【樹幹着生蘚苔類の分布調査】


【林床蘚苔類の分布調査】
400uの方形区を設定し,高木層の高さと植被率を記録しました. 方形区内に出現した維管束植物と林床蘚苔類の種名をリストアップしました. さらに林床蘚苔類については,出現種ごとに生育基物を 岩,土,腐木,落枝に区分して記録しました.