私たちの住む地域は、戦後、経済的効率等を重視するあまり、自然環境、歴史、文化、人との連帯といったものを失ってきており、必ずしも住みやすい場所ではなくなってきました。特に今後、環境との共生を考える時、私はかつてあった伝統的な暮らし(=生活行為)や空間の中にそのヒントが隠されているのではないかと思います。私たちのアイデンティティの中にはこうした自然環境、歴史、文化、人との連帯がかつて存在し、これがある種の心の拠り所であったように思います。私たちは今、再び新たな拠り所を求めているのだと思います。まちづくり、里山、NPO、田舎暮らし、ボランティア等のキーワードに代表される動きもこの拠り所を模索することであると解釈できます。

  一方で近代化による合理的効率的な地域づくりが、人々の生活から見ると実は合理的でなく効率的でもない状況が、顕在化してきているとも言えます。私たちは、まずそうした社会的課題の本質を捉え、そして空間的アプローチを中心に解決への道筋を考えたいと思います。それは「地域住民の生活」と「地域の空間」のあるべき姿を考えた「地域計画」であると思います。特に地域住民と膝を突き合わせてよく話をし、地域をよく歩くことを重視しています。

  また、行政の政策ありきではなく、現実に起こっている現象を詳細に捉えることを中心に行い、政策へと繋げるスタンスを取っています。そこには現実に起きている現象をよく理解していない政策への批判やアンチテーゼとなる研究も含まれています。私たちの専門とする計画分野は、時の政治や経済に翻弄され、計画者の思い通りにはなかなかいかない世界です。しかし私たちの熱意が住民に伝わるとき何かが変わっていく契機となるのではないかと考えています。