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ジャガイモのイモ(塊茎)にある芽には「休眠(きゅうみん:dormancy)」という期間があります。この時期の芽を休眠芽と呼びますが、芽は一定の期間、温度や水分条件等の環境条件が好適になっても生長活動を始めません。この期間を内生休眠期と呼んでいます。内生休眠期は、通常20℃において芽が動かない状態でいる期間として表し、イモが完熟している場合、およそ60〜140日程度です。具体的には芽が3mmまで伸びたときまでの期間として定義されることが多いようです。
この休眠期間(内生休眠期間)の長短は品種によって大きく異なります。休眠がごく短くて貯蔵等には向かない品種に「アンデスレッド」や「インカのめざめ」、「インカゴールド」等があります。また逆に「ユキラシャ」や「十勝こがね」等のように長すぎても、発芽(萌芽)がそろわないで、初期生育が悪く苦労することになります。いずれにしても、この期間が過ぎれば、外部の環境条件さえ良ければ芽が動き出し、萌芽してくるわけです。ご相談のジャガイモは、現在この状態であると思われます。
内生休眠があけると、外部の環境条件さえ整えれば萌芽が始まります。しかし、内生休眠が解除された後もジャガイモを2℃程度の低い温度で貯蔵していますと、芽が伸びてきません。この状態を「外生休眠」または「強制休眠」といいます。つまり、強制的に環境条件により休眠状態が維持されるわけです。
ジャガイモにはこの二つの休眠(内生休眠と外生休眠)の仕組みは重要です。収穫後に直ちに萌芽して次の収穫を迎える前に厳しい冬を迎えると、凍害で枯れてしまいます。そのようなことを防ぐために、芽を凍結のおそれのない地下のイモの形で休眠状態にして冬を越し、次春になるとイモに蓄えられた貯蔵養分を利用して極めて速い速度で萌芽し、再生産するようにプログラムされているのです。栽培の面を考えると、それぞれの地域で環境条件が違いますので、求められる休眠特性も異なっています。それで、それらの生態的特性が異なる種々の品種が成立して来たわけです。
さて、上述のように品種により内生休眠の期間が異なりますので、長期保存をお望みでしたら、休眠期間が長い品種を栽培しましょう。ただ問題なのは、休眠期間が長い品種ほど萌芽がそろいにくいので、無理な早植を避け、浴光催芽(種イモを10〜20℃程度の光が当たるところに置き、できるだけ濃緑で、短い幼芽を育てる処理のことを言います)などを行うと良いでしょう。内生休眠の期間の貯蔵については、低温は必要ではなく、7℃〜15℃の常温下で保存することが可能です。ダンボール箱や麻袋、紙袋などにいれて、または新聞紙などでつつんで保存します。
さらに長期間の貯蔵を望む場合には、外生休眠の状態にする必要があります。具体的には、2℃程度の低温(地中の状態のようにある程度の湿度も維持する)にして貯蔵します。しかし2℃といえば冷蔵庫の野菜室でも4〜5℃程度なので一般の方には難しいかもしれません。ジャガイモは、冷蔵庫の中など4〜5℃の環境では、含まれるデンプンが糖分へと変わり、甘味が増すという特徴がありますので短期間の貯蔵には良いのですが、外生休眠を起こすには温度が高く、庫内が乾燥してジャガイモの水分が抜けやすく、長期間の保存には向いていません。冷蔵庫で保存する場合には3〜4日がおいしくたべられる目安です。また、ジャガイモは冷凍保存にはむきません。含まれる水分が凍ってしまい、解凍してもおいしくありません。冷凍保存するときは、保存前に煮たり、蒸したりの加熱調理をしてから保存します。
また、休眠現象には種々の植物ホルモンが密接に関係していますので、ホルモン剤あるいはホルモン様作用を有する物質を人為的に与えて、休眠を人工的に制御し、貯蔵特性を変える方法が考えられます。具体的には、エチレンや抗ジベレリン剤、放射線を使う方法等が考えられますが、経済的観点その他から考えると、個人で実施するには無理があるでしょう。
以上のように、個人でジャガイモを長期保存するのは、なかなか困難なことです。日本全体で見ると、品種の選定、作型の選定、栽培法の検討(べたがけ栽培やトンネル栽培など)、貯蔵(主として低温貯蔵)方法の工夫、輸送方法の改善等の技術を組み合わせて、周年的に供給できる体制をとっています。したがいまして、家庭菜園などで生産するジャガイモはあまり多く作りすぎないようにして、自家(近所の方等に配布するものも含めて)消費できる程度の栽培にとどめ、食べ終わったら他の地域で、他の栽培法で栽培された他の品種のジャガイモを購入するようにするとよいでしょう。また、家庭菜園でも幾つかの栽培品種を組み合わせることで、長期間とれたジャガイモを食べることが可能になります。
なおジャガイモにつきましては、専門のホームページも幾つか開設されておりますので下記のサイト等を是非参照してみてください。
じゃがいもMiNi白書 http://www.jrt.gr.jp/mini/pm_index.html
ジャガイモ 博物館 http://www.geocities.jp/a5ama/
(回答者:丸尾 達)

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