6.景観シミュレーションとVRMLの利用

6.1VRML

Virtual Reality仮想現実感とは,現実には存在しない状態を,コンピュータグラフィックスを用いて再現する技術のこと。

VRML(Virtual Reality Modeling Language)は,Web上で三次元データを表すための,プログラミング言語Web上での3次元グラフィックスの表示が可能。リアルタイムでの表示,視点の移動が可能なので,仮想空間内を自由に歩き回る体験(Walk Through Simulation)ができる。現在,視点を移動させると同時にリアルタイムで景観CGを描画できる技術は,VRMLが最も使用しやすい。

高速な描画が必要なので,レイトレーシングのような高度なレンダリングは無理で,シューディングのみ行っている。

 

6.2VRML利点

3次元の景観CGを高速で描画できる機能に加え,インターネット上で,作成した三次元CGを公開できる。環境アセスメントでの景観シミュレーションへの応用に便利

VRMLプログラムにより表される三次元グラフィックスを見るにはVRMLプラウザー,VRMLプラグインが必要だが,ほとんどがフリーなので経済的である。VRMLプラウザーとしてはGL View VRMLプラグインとしてはCortoraなどが,よく使用される。

景観シミュレーションを行うとき,景観の情報はVRMLのプログラムとしてテキストで記述される。上記のVRMLプラウザーがあれば,作成したVRMLプログラムは,すぐに見ることができる。したがって,VRMLブラウザーとエディターがあれば,簡単な仮想現実感システム,3次元CGの開発システムができる。この点でもVRMLの使用は経済的である。

 

6.3VRMLの歴史

1994 VRML1.0の企画作成…静的表現

1996 VRML2.0の企画作成…動的表現,対話的(Interactive)表現が可能

VRML2.0は,VRML97と呼ばれる。現在,VRML97と上位互換性をもつX3Dという言語が開発されている。

 

6.4 Web3D

Web上で3次元CGを表現する技術を総称して,Web3Dという。多くのWeb3Dのソフトウエアでは物体の回転や拡大,縮小が可能。VRMLWeb3Dに含まれるが,他のWeb3D技術では,VRMLより美しい画像が作成可能。ただし,Web3Dの規格は多数あり互換性がないのと,3次元データの作成(モデリング,レンダリング)には高価な開発ソフトが必要であることが問題である。

代表的WeB3Dの規格:ViewpointCult3DXVL

Java3D(言語):JAVA3次元CGを描くためのライブラリ。VRMLと同等のことができる。

 

6.3 VRMLの文法

ノード:VRMLでの命令をノードという。

形を作るための幾何ノード:直方体Box 三角錐Cone 円柱Cylinderなど,テキスチャマッピング可能

センサーノード:接触したり,クリックしたとき動作を行なうためのセンサーの役割を持つノード

その他多数のノードがある。

VRMLを学ぶには,次の本がお薦め。

VRML2 動く3Dグラフィックス」著者: 中山 茂 価格: 3200円 発行: 技報堂出版

 

6.4 VRMLによる景観可視化

 VRMLによる景観可視化プロセスは、図に示すように、地形,植物,建物(その他のオブジェクト)データの作成、データ変換プログラムによるVRML形式への変換、リアルタイムでの景観の画像作成などのプロセスから構成される。

 景観を可視化するため、調査された環境情報データから、VRML形式へ変換するプログラムを開発した。 小石川後楽園の可視化例を図に示す。

 

 

 

 

 

 

 

 

GCPGround Control Point)からグリッド標高の計算は次式のように行う。h は計算対象のグリッドの標高,hi は一辺 2 × mの正方形グリッド中にあるGCP の標高,di h からまでの距離。図の例では,m=2 i=3である。

 

 

 

 

 

 

 

 

6.5 VR-Terrain  http://www.h.chiba-u.ac.jp/terra/vr-terrain.htm

VR-Terrainは,緑地環境情報研究室で開発中の植物を含む景観を設計するシステム。(VRVirtual Reality仮想現実感の略) 景観の記述にはVRMLVirtual Reality Modeling Language)を使用。フリーのソフトで,リアルタイムで景観中を動きまわれるのは,世界中でもVR-Terrainのみではないかと思います。

最近の改良で,グラフィックユーザーインターフェイス(GUI)を備えたので,誰でも簡単に景観を創り出しその中を歩く体験ができるようになりました。GUIを使用するようになって,初心者が景観作成作業に習熟するのが非常に早くなりました。GUIを備えたVR-TerrainVRT-GUI)やその他のソフトウェアが現在ダウンロード可能です。