國分 尚 業績一覧(2001–現在)

2010年3月1日現在


1994–2000 | 2001–現在


原著論文

2010

36. Kanaya, T., H. Watanabe, H. Kokubun, K. Matsubara, G. Hashimoto, E. Marchesi, L. Bullrich, T. Ando. Current status of Calibrachoa cultivars as assessed by a study on the morphological and other traits. Scientia Horticulturae 123 (4): 488–495. DOI: 10.1016/j.scienta.2009.10.014 (2 Feb. 2010; online: 4 Dec. 2009)

2008

35. Matsubara, K., K. Shimamura, H. Kodama, H. Kokubun, H. Watanabe, I. L. Basualdo and T. Ando. Green corolla segments in a wild Petunia species caused by a mutation in FBP2, a SEPALLATA-like MADS box gene. Planta 228 (3): 401–409. DOI: 10.1007/s00425-008-0744-y (Aug. 2008; online: May 15, 2008)

Petunia inflataの野生個体由来後代から発見された突然変異株GCS (green corolla segment) は花冠の縁が緑色になる。この緑色の部分には毛や気孔が見られ、正常な花冠の組織とは異なっていた。原因遺伝子はFBP2という、MADS box遺伝子の一つであり、この遺伝子のイントロン部分にトランスポゾンが挿入することで転写量が減っているためであることが判明した。

2007

34. Chen, S., K. Matsubara, H. Kokubun, H. Kodama, H. Watanabe, E. Marchesi, and T. Ando. Reconstructing historical events in the petunia Hf1 gene. Breeding Science 57: 203–211. (11 Sep. 2007)

下の論文にもあるようにHf1はアントシアニン合成酵素の一つ、F3'5'Hをコードし、ペチュニア花色の違いに大きく関与する。市販品種には優性のHf1cと劣性のhf1-2hf1-3の3アレルが存在しているが、これらの起源を探るため、塩基配列を決定して野生種と比較したところ、予想外の事実が判明した。それは、Hf1cの配列はどの野生種とも一致しなかったことで、さらに詳細を調査したところ、品種の起源種とされているP. axillarisP. integrifoliaまたはP. inflataの遺伝子内組み換えが起きた可能性が示唆された。また、hf1-3はトランスポゾンの挿入を除いてHf1cと同じであり、hf1-2はレトロトランスポゾンの挿入を除いてP. integrifoliaまたはP. inflataと一致した。これらの結果により品種の育種における遺伝子の人為的進化(変化)の歴史が推定されたが、野生種の優性遺伝子が品種から排除された理由についてはさらに検討の余地を残した。

33. Chen, S., K. Matsubara, T. Omori, H. Kokubun, H. Kodama, H. Watanabe, G. Hashimoto, E. Marchesi, L. Bullrich, and T. Ando. Phylogenetic analysis of the genus Petunia (Solanaceae) based on the sequence of the Hf1 gene. Journal of Plant Research 120: 385–397. DOI: 10.1007/s10265-006-0070-z (10 May 1997; online: 15 Mar. 2007)

Hf1はアントシアニン合成酵素の一つ、F3'5'Hをコードする。この酵素はアントシアニンの種類を決定する鍵酵素の一つである。ペチュニア属野生種についてこの遺伝子をクローニングし、塩基配列を比較したところ、イントロンIIの挿入/欠失の構造によって6グループに分けられた。さらに、エキソンとイントロンIの配列を元に系統樹を作成したところ、ペチュニアは単系統であり、2つのクレードから構成された。そのうち、P. axillarisの3亜種、P. exsertaP. occidentalisの5分類群からなるクレードはイントロンIIのグループと一致し、さらに果柄が曲がらず自家和合という形態/生理的特性をもっていた。以上から、Hf1はペチュニア属の系統解析に有効であることが示された。

2006

32. Matsubara, K., S. Chen, J. Lee, H. Kodama, H. Kokubun, H. Watanabe and T. Ando. PCR-based markers for the genotype identification of flavonoid-3', 5'-hydroxylase genes governing floral anthocyanin biosynthesis in commercial petunias. Breeding Science 56: 389–397. (Dec. 2006)

31. H. Kokubun, M. Nakano, T. Tsukamoto, H. Watanabe, G. Hashimoto, E. Marchesi, L. Bullrich, I. L. Basualdo, T.-h. Kao and T. Ando. Distribution of self-compatible and self-incompatible populations of Petunia axillaris (Solanaceae) outside Uruguay. Journal of Plant Research 119: 419–430. DOI: 10.1007/s10265-006-0002-y (Sep. 2006; online: 17 Aug. 2006)

Petunia axillarisの亜種axillarisはアルゼンチンのラプラタ河岸では既報のように自家不和合だがアルゼンチン内陸とブラジルでは自家和合だった.亜種 parodiisubandinaは全分布域においてすべて自家和合であった.ところが、亜種axillarisの花器官の形態はアルゼンチン内陸のものがウルグアイ産と違わないのに対してブラジルでは異なり、亜種 parodiiとの中間の形態を示した.従って、これらの起源に違いがあることが示唆された.

30. Nakamura, K., K. Matsubara, H. Watanabe, H. Kokubun, Y. Ueda, N. Oyama-Okubo, M. Nakayama and T. Ando. Identification of Petunia hybrida cultivars that diurnally emit floral fragrance. Scientia Horticulturae 108: 61–65. DOI: 10.1016/j.scienta.2005.12.002 (16 Mar. 2006; online: 18 Jan. 2006)

ペチュニア園芸品種はあまり香らないことが知られているが,中には香りを感じる品種もある.そこで,香るペチュニアの育種を進めるための基礎情報として,ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて香る園芸品種を探索し,その特徴を明らかにした.その結果,香りが強い品種は花色が青紫色に限られ,主要芳香成分としてイソオイゲノールが検出された.これは,ペチュニア品種の親で強い香りをもつP. axillarisが安息香酸メチルを主要成分とするのとは異なった.また,香りをもつ青紫色の品種は生花弁抽出液のpHが約5.6と他の品種よりも明らかに高く,高pHと芳香の関係が示唆された.

2005

29. Ando, T., N. Ishikawa, H. Watanabe, H. Kokubun, Y. Yanagisawa, G. Hashimoto, E. Marchesi, E. Suárez. A morphological study of Petunia integrifolia complex (Solanaceae). Annals of Botany 96: 887–900. DOI: 10.1093/aob/mci241 (Oct. 2005; online: 15 Aug. 2005)

Petunia inflataP. integrifoliaは一見よく似た形態をもち、P. inflataの扱いは研究者ごとに独立種、P. integrifoliaの亜種または変種と様々であった。この論文では、数多くの自生地およびさく葉標本の観察と栽培した植物の花器形態の多変量解析を行った。その結果、この2種には明確な形態的ギャップが存在し、分布域も重なっていないことから、これらを独立種とすべきことが判明した。

28. Matsubara, K., H. Kodama, H. Kokubun, H. Watanabe and T. Ando. Two novel transposable elements in a cytochrome P450 gene govern anthocyanin biosynthesis of commercial petunias. Gene 358: 121–126. DOI:10.1016/j.gene.2005.05.031 (26 Sep. 2005; online: 26 July 2005)

Hf1はペチュニアのアントシアニン合成系酵素F3'5'Hをエンコードしており、この酵素が機能しないことによってシアニジンやペオニジンが生じる。この論文では市販品種の劣性hf1アレルに注目し、機能不全の原因を探ったところ、2種類の劣性アレルの存在が確認され、それぞれトランスポゾンとレトロトランスポゾンの挿入に起因していた。また、これらは、新規トランスポゾンであり、dTph9, rTph1と命名した。

27. Ando, T., H. Kokubun, H. Watanabe, N. Tanaka, T. Yukawa, G. Hashimoto, E. Marchesi, E. Suárez and I. Basualdo. 2005. Phylogenetic analysis of Petunia sensu Jussieu (Solanaceae) using chloroplast DNA RFLP. Annals of Botany 96: 289–297. DOI: 10.1093/aob/mci177 (online: 8 June 2005)

PetuniaCalibrachoaは広義のPetuniaとされていたが、1990年に独立した属として認められた。しかし、分子系統学的にこの2属を支持する明確なデータは得られていなかった。そこで、葉緑体DNAのRFLP分析によって広義のPetuniaの系統を調べた論文である。これによってPetuniaCalibrachoaの単系統性が明らかになった。また、過去の研究においてCalibrachoaC. parviflora+C. pygmaeaと残りの種の2群に細分化されることが示されていたが、これについても分子系統樹で支持された。

26. Nakajima, T., K. Matsubara, H. Kodama, H. Kokubun, H. Watanabe and T. Ando. 2005. Insertion and excision of a transposable element governs the red floral phenotype in commercial petunias. Theoretical and Applied Genetics 110: 1038–1043. DOI: 10.1007/s00122-005-1922-y (online: 25 Feb. 2005)

市販赤花ペチュニア品種においてはアントシアニジン生合成の鍵酵素の1つである、ラムノシルトランスフェラーゼ(RT)が機能しておらず、結果としてシアニジンを蓄積する。この原因を遺伝子レベルで探った論文で、赤花品種の劣性rtアレルにはトランスポゾン様配列が挿入されているものと、それが移動した後のフットプリントを残すものがあり、どちらの場合も正常な翻訳が行われないためにRT活性を失ったことが判明した。

25. Mabuchi, T., H. Kokubun, M. Mii and T. Ando. 2005. Nuclear DNA content in the genus Hepatica (Ranunculaceae). Journal of Plant Research 118: 37–41. (online: 15 Feb. 2005)

キンポウゲ科のミスミソウ属(Hepatica)の全種について核DNA量を計測した論文である。最も祖先的な形質を残すH. falconeriの核DNA量が最も少なく、日本産のケスハマソウが最大であった。Hepaticaには2倍体の種と4倍体の種があり、形態的には葉が全縁と鋸歯のある種に分けられる。H. falconeriは2倍体・鋸歯あり、ケスハマソウは4倍体・全縁であることから、Hepaticaにおいては種の進化に伴って核DNAが増加していることが判明した。また、通常4倍体化の後には核DNAが減少することが報告されているが、Hepaticaにおいては4倍体種の核DNA量は2倍体種の2倍以上あり、特殊な種分化が起きていることを発見した。

2004

24. Ando, T., M. Takahashi, T. Nakajima, Y. Toya, H. Watanabe, H. Kokubun and F. Tatsuzawa. 2004. Delphinidin accumulation is associated with abnormal flower development in petunias. Phytochemistry 65: 2219–2227. (July, 2004)

従来のPetuniaの色素に関する研究には特殊な研究用系統が使われていたが、初めて市販品種のアントシアニジン構成について調べた論文である。液体クロマトグラフィー分析結果を多変量解析に供したところ、市販品種はシアニジン系(赤色)、ペオニジン系(桃色)、ペチュニジン+マルビジン系(紫色)の3群に分けられ、花色と一致していた。興味深いことに、理論的には可能である、デルフィニジンを主要色素とする品種は発見されなかった。そこで、交配によってデルフィニジンを生成する個体を作出したところ、この個体では花冠が萎縮して観賞価値がなくなることがわかった。市販品種においてはデルフィニジンの蓄積と花冠の萎縮に関して、何らかの因果関係があることが示唆された。

23. Murakami, Y., Y. Fukui, H. Watanabe, H. Kokubun, Y. Toya and T. Ando. 2004. Floral coloration and pigmentation in Calibrachoa cultivars. J. of Horticultural Science & Biotechnology 79: 47–53. (January, 2004)

CalibrachoaPetuniaに近縁な多年草/低灌木であるが、豊富な花色によって急激に消費が増えている重要花卉である。本論文ではCalibrachoa市販品種の花色素を解析し、花色の幅の原因を探った。花冠中のアントシアニジン構成はPetuniaが5種であるのに対し、Calibrachoaでは3種と幅が狭いものの、カロテノイド含有量の幅はPetuniaよりも広く、アントシアニンとカロテノイドの組み合わせによって豊富な花色が生じていることが明らかになった。

2003

22. Tsukamoto, T., T. Ando, K. Takahashi, T. Omori, H. Watanabe, H. Kokubun, E. Marchesi and T.-H. Kao. 2003. Breakdown of self-incompatibility in a natural population of Petunia axillaris caused by loss of pollen function. Plant Physiology 131: 1903–1912. (May, 2003)

ナス科の自家不和合性の機構について、花柱側の因子がSRNaseであることはよくわかっているが、花粉側の因子についてはごく最近まで不明であった。和合性の個体が混在するウルグアイの野生個体群U83の解析中に、花粉側の機能不全により自家不和合成が崩壊している個体を発見した論文である。前年に遺伝子組み換えによって花粉側の自家和合性機能を抑制した例は報告されたが、野生の花粉側突然変異を報告したのはこれが最初である。今後のナス科における自家不和合性機構の解明を大きく進歩させる可能性がある。

21. Murakami, Y., Y. Fukui, H. Watanabe, H. Kokubun, Y. Toya and T. Ando. 2003. Distribution of carotenoids in the flower of non-yellow commercial petunia. J. of Horticultural Science & Biotechnology 78: 127–130. (March, 2003)

従来、ペチュニアの花色はアントシアニンを中心として研究されてきた。この論文では初めて市販品種の花冠カロテノイドについて詳細な分析を行った。その結果、黄花の品種の主要色素はカロテノイドであることを示したのみならず、赤花の品種にもカロテノイドを多く含むものがあることを解明し、橙色のような新しい花色の育種の可能性を明らかにした。

20. Tsukamoto, T., T. Ando, H. Kokubun, H. Watanabe, T. Sato, M. Masada, E. Marchesi and T.-H. Kao. 2003. Breakdown of self-incompatibility in a natural population of Petunia axillaris caused by a modifier locus that suppresses the expression of an S-RNase gene. Sexual Plant Reproduction 15: 255–263.

P. axillarisは通常自家不和合性であるが、時に和合性の個体が混在する個体群が自生地にみられる。この論文ではウルグアイのそのような個体群の1つ、U1における自家不和合性の崩壊の原因を探った。その結果、特定のSアレル、S13が花柱側で発現しないことが自家不和合性崩壊の原因であり、さらにこのS13アレルのみを特異的に阻害する遺伝子の存在が予想された。

2002

19. Tsukamoto, T., T. Ando, H. Watanabe, H. Kokubun, G. Hashimoto, U. Sakazaki, E. Suárez, E. Marchesi, K. Oyama and T.-H. Kao. 2002. Differenciation in the status of self-incompatibility among Calibrachoa species (Solanaceae). J. of Plant Research 115: 185–193. (May, 2002)

南米に産するCalibrachoa属全種について自家不和合性を調査した論文で、ほとんどの種が自家不和合性であったが、唯一C. parvifloraが自家和合性であることを示した。この種は属内でも最も内陸部まで分布を広げており、既報のPetunia属における自家和合/不和合性の分布と一致した。C. parvifloraはさらに北米にまで達しており、この広い分布の一因が自家和合性の獲得にあることが示唆された。

18. Kokubun, H, T. Ando, S. Kohyama, H. Watanabe, T. Tsukamoto, E. Marchesi. 2002. Variations of several morphological characters of Petunia axillaris in Uruguay. Journal of Japanese Society for Horticultural Science 71: 26–39. (January, 2002)

南米ウルグアイの102地点から採集したPetunia axillaris の種子より植物を育て,園芸的に重要と考えられる3つの花器形質と7つの栄養器官形質を計測し,その変異幅を調査して,有用と考えられる形質の集中する地域を抽出した.両形質の多くについて,亜種axillaris,亜種 parodii および2種の中間型の間に有意差がみられた.各群落は株の高さ,株の幅,開花時の側枝数の3形質を用いたクラスター分析により次の6つの形態型に分類できた.1)直立・高性,2)中間型,3)コンパクト,4)粗放,5)小型・ほふく性,6)大型・ほふく性.これらの形態型と自生地の環境,特に河岸,海岸の群落について考察し,また種内分類群との関連についても述べた.さらに園芸的に利用可能と思われる形質をもつ群落とその育種における有用性について考察した.

2001

17. Ando, T., M. Nomura, J. Tsukahara, H. Watanabe, H. Kokubun, G. Hashimoto, E. Marchesi and I. J. Kitching. 2001. Reproductive isolation in a native population of Petunia sensu Jussieu (Solanaceae). Annals of Botany 88: 403–413. (September, 2001)

共同研究者の安藤は1988年以来14季に及ぶ南米探査によって1750ものペチュニア群落を調査してきたが、その中に唯一、4種が共存する群落がブラジル南部のリオグランデ・ド・スール州にあり、この同地種の隔離方式の調査から、この属の種分化機構を整理した。特に、人工交配によれば互いに交雑可能でありながら自生地では隔離されている2種に対して、初めてその訪花昆虫を特定し、訪花昆虫の違いが生殖隔離の一因であることを報告した。


報告、研究資料

2007

2. Kokubun, H., H. Watanabe, N. Tanaka, T. Yukawa, G. Hashimoto, E. Marchesi, E. Suárez and T. Ando. RFLP data of chloroplast DNA in the genus Petunia sensu Jussieu (Solanaceae). HortResearch 61: 41–51. (March, 2007)

先にペチュニア属野生種の葉緑体DNAのRFLPによる系統解析を発表したが(論文27)、紙面の都合で詳細なRFLPデータは掲載できなかった。本報告では今後の研究に資するため、RFLPの詳細を掲載し、同時に系統樹上にそれを示した。


このページの最初へ | 1994–2000近況のページへ


2001年1月14日作成、2010年4月3日更新

國分 尚 (Hisashi Kokubun)
hkokubun@faculty.chiba-u.jp