系統分類学

クマツヅラ科とシソ科の微妙な関係

2004年11月30日

秋の宿根草花壇を落ち着いた青で彩るダンギク [Caryopteris incana (Thunb. ex Houtt.) Miq.]。現在出版されているすべての園芸書や植物図鑑ではクマツヅラ科に分類されています。ところが最近の研究ではシソ科であるという結論になっています。

この他にもクマツヅラ科とされていた多くの植物がシソ科に移されています。園芸的に重要なものではCallicarpa(ムラサキシキブ)、Clerodendrum(クサギ、ゲンペイカズラ)、Vitex(ハマゴウ、ニンジンボク)などがあります。逆にシソ科に分類されていたものでクマツヅラ科に移されたものは無いようです。

また、ダンギクの属するCaryopteris属は大幅に組み換える方向に動いています。例えば、従来同じ属に分類されていたカリガネソウは別の属に移されるようです。

もともと形態的に似ているところの多い科であったわけですが、果実がクマツヅラ科は漿果(しょうか)または、さく果なのに対して、種子を1つだけ含む痩果(そうか)になるものをシソ科としてまとめていました。例外があったかどうか知りませんが、茎が四角というのもシソ科の特徴とされていました。この狭義のシソ科の部分に、もう少し早い時期に枝分かれした漿果になる(おそらくこれが原始形質なのでしょう)植物を加えた形です。新しく大きくなったシソ科に共通する形質としては茎葉に強い香りがあることぐらいでしょうか。

参考文献

Abu-Asab, M. S., P. D. Cantino, J. W. Nowicke and T. Sang. 1993. Systematic implications of pollen morphology in Caryopteris (Labiatae). Systematic Botany. 18: 502-515.

Cantino, P. D., S. J. Wagstaff, R. G. Olmstead. 1999. Caryopteris (Lamiaceae) and the conflict between phylogenetic and pragmatic considerations in botanical nomenclature. Systematic Botany 23: 369-386.


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2004年11月30日作成、2004年12月13日更新


國分 尚
hkokubun@faculty.chiba-u.jp