トレニアのゲノム進化機構の解明


Kikuchi S, Tanaka H, Shiba T, Mii M, Tsujimoto H. Genome size, karyotype, meiosis and a novel extra chromosome in Torenia fournieri, T. baillonii and their hybrid. Chromosome Res. 2006;14(6):665-72.

トレニア(Torenia)はゴマノハグサ科に属する一年草で、初夏から秋まで開花する花卉園芸植物です。トレニア属の2種である、T. fournieri T. baillonii の染色体を観察すると、それぞれ 2n=2x=18、2n=2x=16 と染色体数が異なっています。私達は、この2種間で種間交雑を行ってF1雑種を育成しましたが、その減数分裂の対合の様子を調査したところ、8本の二価染色体と1本の一価染色体が出現することを見いだしました。多くの生物で見られる近縁種間の染色体数の増減は、転座などの染色体の再構成によって生じるものと考えられています。染色体の再構成が起こると、転座した染色体領域の間で対合が起こるので、多価染色体が出現するなど、減数分裂での染色体の対合は複雑になります。FISH(蛍光 in situ hybridization)法を用いて異種間のトレニアの染色体を蛍光で染め分ける方法を開発した後に、対合する染色体を観察したところ、二価染色体は異種間の染色体同士で形成され、一価染色体は染色体数が一本多いT. fournieri のものであることを確かめました。これらの事実は、一価染色体となるT. fournieri 染色体が持つDNA配列と相同のDNA配列が、T. baillonii の染色体のなかには存在せず、2種間の染色体数の変化は、一般的な染色体の再構成によって生じたものではないという可能性を示しています 。現在、この染色体がどのようなDNA配列から構成され、どのくらいの遺伝子を持っているのかといった染色体構造に関する研究と、トレニアの野生種を集めて、この染色体(あるいは染色体断片)のDNA配列がどのように分布しているかといった染色体の起源に関する研究を明らかにしようと研究を行っています。

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