針葉樹実生の分布密度と定着基質との関係

 富士山南斜面に広がる針葉樹林では,針葉樹の苗木が地表面よりも腐朽倒木上に高密度で分布しています.ところが,大きく育った針葉樹を観察すると,それらは腐朽倒木上よりも地表面に多く分布しています.  「なぜ針葉樹の苗木と成木で分布位置が異なっているのか?」これを明らかにすることが私の研究です.


【富士山の南斜面】
私が調査を行っている富士山の南斜面では標高1700m〜2000mあたりに針葉樹林が成立しています.代表的な針葉樹はシラベ,トウヒ,それにコメツガです.


針葉樹林の林床には腐朽倒木が散在しています.そうした腐朽倒木には針葉樹の苗木がたくさん生育しています.写真の腐朽倒木では数十個体の針葉樹の苗木を観察できました.
【腐朽倒木上に分布する針葉樹実生】


【森林内での調査】
森の中に調査区を作って,針葉樹の苗木がどんなところに分布しているのか調べます.このときには倒木の量,表面の状態なども記録しました.


1.ザック:調査道具,食料などを詰めて調査に向かいます.2.調査道具:調査の基本は紙にペン,それに折れ尺.3.ペグ:メジャーをひっぱっても始点がずれません.4.ラジオ:天気予報を聞くだけではなく,不意な野生動物との遭遇を避けられます.5.根返り木の根:かつて木が倒れた場所だと分かります.少し平坦なのはそのため.6.シカのふん:平坦なので楽に用足しできるのでしょう.富士山では7種の哺乳類を見ました.
【調査の実際】


【風倒地での調査】
これは1996年の台風によって作られた風倒地です.私はこうした風倒が起こることで針葉樹の苗木と成木の間で分布位置がずれてくると考えています.