平ヶ岳における湿原の縮小とハイマツの成長量変動

 群馬・新潟県境にまたがる山岳地帯は奥只見・奥利根と呼ばれる日本でも有数の豪雪地帯です. この地域に成育する植物はこの積雪の影響を強く受けており, 山地上部に湿原が多数存在するなど独特の植生が発達しています. 近年,これらの湿原が乾燥化して面積が縮小するなどの報告がなされ, その原因として積雪量の減少や気温の上昇が指摘されています. しかし,この地域における気候変動と植生の変化に関する関連性は明らかにされていません. そこで,この地域における積雪量の減少などの気候変動が 植物へどのような影響を与えているかを明らかにする目的で, この地域のほぼ中心に位置する平ヶ岳の頂上部(調査地の概要@)に成育するハイマツの年輪を調査しました.


【調査地の概要@】
調査を行った平ヶ岳は群馬・新潟県境にまたがっており,奥只見・奥利根のほぼ中央に位置します. 標高は2140mで頂上部は平坦地形を持ち,湿原はこの平坦面に分布しています. 頂上部の湿原はヌマガヤ・イワイチョウ・スゲ類・ミズゴケ類などが優占し, 泥炭層の厚さは平均40cm. 湿原の周辺はチシマザサ草原,ハイマツ低木林が優占し, さらにその周囲にはオオシラビソが優占する針葉樹林となっています.


既存の調査によると,乾燥化によって湿原にハイマツやチシマザサが侵入しています. 気候帯としては日本海側に属し,年間平均気温は0.5℃,年間降水量は2500mm〜3000mmに達します. 年間降水量の半分以上が冬期の降雪によるもので, 平ヶ岳頂上部の積雪深は6mを越える事も珍しくありません.
【調査地の概要A】


【調査方法@】
平ヶ岳頂上部に成育しているハイマツ10本を地際部で切断,採取しました.


採取したサンプルを研究室に持ち帰り年輪幅の読み取りを行いました. この年輪幅の変動と周辺の気象観測点における積雪深記録との比較を行いました.
【調査方法A】