千葉大学 華岡研究室:研究内容



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研究内容


私たちの研究室では、光合成生物(植物、微生物)を研究材料に用いて、色素体(葉緑体)分化のメカニズム、光など環境変化に対する応答機構、生物時計に依存した遺伝子発現調節、核とオルガネラ間のシグナル伝達の分子機構などの解明を目指し、主に分子生物学、生物化学や分子遺伝学のアプローチを利用して研究を行っています。以下に個々のテーマについて詳しく説明します。





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1. 高等植物における色素体分化のメカニズム

microtom2.JPG 植物に特有のオルガネラ(細胞内小器官)である色素体は、光合成など植物の生育にとって重要な多くの機能を持っています。この色素体は、シアノバクテリアの祖先種が細胞内共生することで誕生したと考えられており、バクテリアに由来する独自のゲノムDNAとその転写翻訳システムを持っています。また高等植物の色素体は、組織や細胞の分化に応じて、また環境変化に応答することで、光合成組織では葉緑体、貯蔵組織ではアミロプラストなど構造・機能的に多様に分化することが知られています。私たちは、この色素体分化における遺伝子発現制御のメカニズムや、分化に際した細胞内シグナル伝達機構を理解することで、多様な色素体分化の分子機構を明らかにしたいと考えています。


2. プラスチドシグナル伝達の分子機構

06-09-26-B-40 のコピー.tif 光合成など色素体機能に関わる遺伝子の発現は主に細胞核によりコントロールされていると考えられていますが、最近になってそれとは逆に色素体が自身の状態をシグナルとして発信し、核遺伝子の発現を制御するという新しい概念が提唱され、プラスチド(色素体)シグナルとして注目されています。プラスチドシグナルはこれまでストレス条件下での応答機構のひとつとして研究が進められてきましたが、最近は様々な現象において広く機能することが示されつつあります。私たちは、主に色素体分化の側面においてプラスチドシグナルが関わる可能性に着目して研究を進めており、同時にシグナル             伝達機構の普遍性や特異性についても明らかにしたいと考えています。


3. 概日リズムに応答した遺伝子発現調節メカニズム

スライド2.jpg 概日リズム(サーカディアンリズム)は、様々な生命活動を約24時間周期で調節するための内在的なシステムであり、我々ヒトを含め多くの生物に備わっています。シアノバクテリアは概日時計を持つ最も単純な生物として広く研究されており、中心振動体の構造や機能などの重要な知見がこれまでに数多く明らかにされてきました。シアノバクテリアの多くの遺伝子は約24時間周期の発現パターンを示すことが知られていますが、時計の振動体からの情報がどのようなメカニズムで遺伝子発現系に伝わるかについてはあまり分かっていません。私たちは、この概日時計に応答した転写制御機構についての研究を行っており、その複雑な分子機構の解明を目指しています。


4. クロマチン免疫沈降法を用いた転写制御の解析

スライド1.jpg クロマチン免疫沈降 (ChIP) 法は、細胞内で形成されているDNA-タンパク質間の結合状態をリアルタイムに、かつ定量的にモニターすることのできる解析手法であり、これまでの分子遺伝学的手法・生化学的手法と組み合わせることで、より明確な転写制御のメカニズムを明らかにできると期待されています。私たちの研究室では、このChIP法を植物の葉緑体研究、またシアノバクテリア研究に導入することに成功しており、現在は特に光などの環境変化に応答した転写制御の新しい側面や、遺伝子欠損株の得られない必須制御因子の役割の解明を目指した研究を行っています。また、ChIP法を様々な植物             種に導入することも試みつつ研究を進めていきたいと考えています。