パンコムギの交雑親和性に関する研究








 パンコムギへ異種植物の持つ有用遺伝子を導入しようとする場合、両種間の交雑親和性が問題となる。パンコムギを雌親とした場合の交雑親和性に関しては、パンコムギの第5同祖染色体に座乗するKr遺伝子群によって支配されていることが明らかとなっている。優性のKr遺伝子を持つ品種・系統では、雌蕊において異種植物の花粉管の柱頭への侵入や子房内での伸長が阻害される。そのKr遺伝子の構造と詳細な機能を明らかにするために、ディファレンシャル・ディスプレイ法を用いてパンコムギの雌蕊内で産出されるKr遺伝子産物の検出と同定を試みている。また、雌蕊よりタンパク質を抽出し、2次元電気泳動により交雑親和性特異的タンパク質の検出を行う。さらに、それらのタンパク質をゲルから切り出し、質量分析装置によりアミノ酸配列を決定し、それを基にDNAの塩基配列を推定する。この結果とディファレンシャル・ディスプレイによる結果とを統合して、パンコムギの交雑親和性に関与する遺伝子の特性を明らかにする。