農産食品工学研究グループ 千葉大学
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研究活動 Research

■食品工学関係(主に小川准教授)

・植物性食品の消化特性解明に関する研究

 一般に食品の消化性は栄養学・医学関連分野で研究されています。しかし経験的に白米とおかゆの消化性が違うことが知られているように、調理法や加工法の違いによっても消化性は変化します。これは、調理・加工操作によって含有成分の状態変化や食品組織の構造変化などが生じることが原因とされていますが、その詳細は実際のところよく分かっていません。本研究では食品の構造的な特性、特に植物細胞の理化学的特性に着目し、in vitroの人工消化試験法を適用して、例えば硬いコメ粒が炊飯工程によって軟らかな米飯になった際の微細構造変化と消化性の関係などについて研究しています。研究手法として、顕微鏡を用いた組織構造観察、物性測定、化学的な成分分析、等を適用しています。研究対象の食材には、米などの穀物類、大豆などの豆類、寒天ゲルで作製した食品モデル、ミカンの果皮細胞を用いた植物細胞モデル、などを用いています。

・カット青果物保蔵時の品質維持に関する研究

 物理的な環境要素(温湿度、光、ガス、電磁気、音響など)は生体や食品素材に様々な影響を及ぼします。例えば、収穫後の青果物を低酸素条件下で貯蔵すると呼吸による代謝機能が低下します。これにより各種含有成分の消耗を防いで結果的に収穫時の品質を保つことになります。本研究では、ガスや光などの物理環境条件を能動的に制御することによって、カット加工された植物組織の保蔵性向上技術開発を目指しています。現在は、ガス環境と光環境それぞれがカット加工後の植物組織の生理活性に及ぼす影響について研究を進めています。カット野菜モデルとしてピーマンを用い、長期間の保蔵実験を通して各環境条件と品質要素の関係などについて調査、検討しています。

■ポストハーベスト工学関係(主に椎名教授)

 収穫後の農産物について、主として工学的な手法を用いて品質管理等に係わる研究開発を行う学問分野です。
 農産食品工学研究グループでは、例えば、保存環境条件と品質との関係解明、加工処理に伴う品質変化の解析とそれに基づく処理技術の最適化、農産物とその加工品を摂食することで健康の維持増進を図ることを支援するためのデータベースシステムの開発、農産物をはじめとする食品の低コスト、高効率物流技術の開発、などの研究テーマを実施しています。

・追熟性青果物の食べごろ保証

 収穫後の青果物において、成熟が進む現象を、追熟と呼びます。メロンは、糖含量がほぼ最大になった時点で収穫され、追熟により果肉の軟化、香気成分の生成などが進み、食べごろとなります。しかしながら、適度な果肉硬度で、香気成分が充実してきた時点、すなわち「食べごろ」を、外観から判断することは困難です。そこで、本研究では、果実の保存条件と追熟の進行との関係を調べ、食べごろの果実を消費者に提供する技術の開発を行います。併せて、果実の非破壊熟度判定技術、個体識別を含むトレーサビリティ技術を開発し、食べごろ保障技術を確立させ、メロンを食べることの満足を最大化させることを目指します。

・青果物のストレス応答解析に基づく物流環境の最適化

 植物の個体全体あるいはその一部を収穫したものが青果物ですが、青果物は呼吸によって化学エネルギーを獲得し、一つの生命体としての機能を維持しています。外敵や悪環境から逃避ができない植物が身を守るために獲得したストレス応答は、収穫後の青果物でも維持され、物理的、化学的、生物的なストレスに対して、種々のストレス応答を示すとともに、ストレス応答が品質低下の原因にもなります。そこで、本研究では、収穫後青果物について、各種ストレスに対する応答を遺伝子発現等により解析することで、ストレスの種類・強度とそれに対する応答を定量的に評価し、品質を保持するための保存環境条件の解明を行い、物流環境の最適化手法の開発を行います。

・カット青果物の品質コントロール

 収穫後青果物に切断、剥皮などの一次加工を施したカット青果物は、その利便性から消費が拡大しています。切断は、物理ストレスにより青果物の代謝を活発化させることに加えて、切断部位の周囲環境を切断前と大きく変化させるため、品質変化を引き起こす要因となります。そのため、カット青果物の品質保持のためには、温度、湿度、ガス組成などの環境因子を適切に制御することが不可欠です。そこで、本研究では、青果物の環境応答特性の解析、含有成分やテクスチャーなどの変化解析に基づき、品質を維持、向上させるための条件解明を行います。


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