研究紹介

 
バイオテクノロジーによる新植物の開発

植物体再生系、遺伝子導入系の開発
 遺伝子組換え植物を作出するためには、改良対象である植物種において、細胞からの植物体再生系と遺伝子導入系の両方が確立されていることが前提となります。植物は体の一部(組織)から直接、あるいは脱分化を経て一度細胞の集塊(カルス)を形成し、そこから再び個体を再分化する能力を持ちます。これは「分化全能性」と呼ばれ、古くから知られているものの、植物体を再生させる培養条件は個々の植物種や材料となる組織によって様々です。また、遺伝子導入の効率も供試材料となる組織や細胞によって様々なため、各々のケースに合わせて最適な条件を模索し、系の開発を行っています。

組換えベクターの開発
 導入遺伝子を組み換えた植物の目的の組織だけで発現させたり、マーカー遺伝子が残らないようにするための、組換えベクターの開発を行っています。


組換え植物の開発
 耐病性やバイオマス増大、花色の変化をもたらす遺伝子などを細胞に導入して、有用な形質を付与された新しい植物の開発を行っています。主にアグロバクテリウムという細菌を利用して、目的の植物細胞に遺伝子を導入する手法を用いています(パーティクルガン法で行うこともあります)。遺伝子が導入された細胞だけを選抜して増殖させた後に植物体を再生させ、最終的に有用形質が付与された組換え植物を作出しています。当研究室では穀類から園芸植物まで多様な植物について組換え植物の開発に取り組んでいます。


倍加植物の作出
 細胞内のDNA量が増加すると、細胞のサイズが増加して個体サイズも大きくなることが知られています。植物体を大きくすることは農業上も重要です。 不稔である3倍体を倍加させることによって、交配親として利用できるようにもなります。当研究室では、薬剤やガスを用いて人為的に倍加植物を作出しています。

2. 種分化の解析研究

3. 植物生殖システムの解明研究

 陸上植物の7割以上を占める被子植物は人類の生活にも必須の生物種であり、多くの育種が行われてきています。なかでも交雑育種は重要な育種法の一つであり、有性生殖現象を利用しています。しかし種子親と花粉親に用いる植物種の組み合わせによっては交雑ができず、後代が得られません。将来、このような交雑不親和を克服する細胞工学的技術の開発のためにも、生殖の仕組みを遺伝子レベルで把握することが重要ですが、関連因子の分子生物学的な情報はまだ少ないのが現状です。本研究室では被子植物の生殖過程を制御する因子の探索や機能を解明する研究を行っています。

当研究室で作出された青いコチョウラン(上)とダリア(下)

薬剤処理で倍加したアブラナ科植物(左はコントロール)

作物や花卉の品種改良を効率良く行うためには、対象とする植物の種分化および類縁関係に関する知識が不可欠です。本研究では、すべての植物に適応可能な識別法を開発し、種分化や類縁関係を解明することを目指して研究を行っています。