礒田研究室
主要研究テーマ
乾燥地農業の生産性向上

乾燥地農業の生産性向上
世界的にみれば食料生産は増大していますが,人口増加に対する食料生産の増大の必要性は年々高まっています(下左図).しかし,優良環境下での生産性は現在以上に向上させることは難しく、不良環境下、今後特に乾燥地域での生産性の向上が重要になると思われます.また、発展途上国の多くが乾燥地域にあることからも国際的貢献の上でも重要でとなるでしょう.さらに,近年は経済発展に伴い中国のダイズ輸入量が急増しており,世界の食糧需給バランスの点から考えても中国国内での生産向上の必要性が急務です(下右図).こうした観点より、1990年より中国新疆ウイグル自治区で、乾燥条件下での作物の生育生産向上のための研究を始めています.
中国のダイズ,ダイズ油輸入量の推移(単位万トン,FAO)
世界の主要作物生産量の推移(FAO)
1998年には研究室の卒業生である王培武氏によって石河子中亜干旱農業環境研究所(現:烏魯木斉中亜干旱農業環境研究所)が設立され、この研究所の研究方針と運営に係わっています.この研究所では、従来の畦間かんがいにかわる節水型のかん水方法の研究、作物の耐乾性に関する研究、石炭灰を原料とした土壌改良剤を用いた乾燥地農業生産向上に関する研究、有機農業に関する研究などを行っています.1999年から毎年、研究室の学生がこの研究所で長期短期にわたりワタ、ビート、ダイズ、加工用トマトに関する実験を行っています.2002、3、4年にはダイズで8000kg/ha以上の世界記録に近いと思われる収量が得られました.この高収量の要因についても現在解析中です.また,最近は水稲の点滴かんがい栽培の実験を始めています.この栽培方法により,ある程度の乾燥地域でも水稲栽培が可能となり,新たな地域での栽培拡大が期待されます.

点滴かんがい栽培
従来の畝間かんがいに比べ,約半分程度の水で栽培が可能です.少量の水を頻度多く与えることができ,節水とともにきめ細やかな水管理が可能となります.
土壌改良材
石炭灰を特殊な凝集剤で粒状に固めたものを研究所が開発しました.産業廃棄物である石炭灰を有効利用し,作物の生育を良好にすることができました.
石炭灰を利用した土壌改良剤
土壌改良剤を入れた効果(右側)

ダイズの超多収栽培
2002年よりダイズ収量実験で8000kg/haを超す超多収が得られました.現在,大規模圃場で栽培し,実際栽培への応用を図っています.
1株に150個の莢が着いた(上段左) 大規模栽培実験(上段右,下段左右)

水稲の点滴かんがい栽培
水稲を点滴かんがいとマルチを使うことで畑地で栽培することが可能となりました.この栽培方法が確立できれば,水田に比べ少量の水で栽培可能となり,乾燥地でも水稲の栽培可能地域が広がるでしょう.かん水を通じて施肥を行うことができ,よりきめ細やかな施肥管理も可能です.また,段々畑を作らず,傾斜地での栽培も可能となります.さらには、温室効果ガスであるメタンガスの発生も水田に比べ抑制できる可能性もあります.
畑地での点滴かんがい栽培(すべての写真) 傾斜地での栽培(下段右)

電話:047-308-8814
千葉大学大学院園芸学研究科
E-mail : isoda@    
礒田昭弘
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