微生物工学Q&A2010 of bikou

千葉大学園芸学部•園芸学研究科
Research Group of Microbial Engineering


4月20日(第2講)

Q:生物3界説についてもう少しー分類学の大きな流れー
私達が普通に目にする生物には、人間を別格とすると動物と植物しかないように見えます。これが最も古典的な生命観で、別にこれで困らない時代が長く続きました。しかし顕微鏡が出てきて、細胞レベルでの観察ができるようになると、まず、何だか目に見えない生物も沢山居るらしい。それも、動物だか植物だか判らない。これを微生物と言うようになった訳です。その後、どうやら生物はすべて細胞から成り立っていることが判る。また、細胞をよく見ると、細胞核のあるのとないのがいる。この辺の段階で、生物の、それまでとは違う分類学ができてきます。
動物と植物、これはそのままで良い。但しダーウィン以来、ヒトは動物の一部であるという理解が深まった。カビやキノコ、これらは動物でも植物でもなさそうで、しかも比較的まとまったグループと考えられたので、菌類としてまとめた。これら、動物、植物、菌類は別格に進化した生物と考え、それ以外の核を持っている有象無象、これらを原生生物(プロティスト)といって一緒くたにまとめ、動植物菌類の下に置きました。さらに、核のない原核生物は何だか判らないので、さらに下に置いてモネラと名前をつけた。これが生物五界説(Five Kingdoms)です。
Woeseさんがリボゾームを分類基準にとって分子時計を使い、原核細胞をバクテリアとアーケア(古細菌)に分けた話をしました。それを素直に足したのが、モネラを二つに割った生物6界説。ですが、よく考えてみると、バクテリアとアーケア、真核生物の3つのグループには、全ての生物を三つに分けている非常に大きな違いがあって、それまでの真核生物を4つに分けていた違いなどとは比べ物にならないくらい違う。そこで、生物全体を三つのグループ、これは従来のKingdomとは違うのでDomainと名前を付け、生物3界説(Three Domains)ということになった、というのが話の流れです。
その昔、人類は地球が宇宙の真ん中だと考えて太陽が地球の周りを回ると思っていた。それが太陽が中心となり、その太陽系も銀河系の端の方にあると判り、その銀河系も別に宇宙の中心ではないですね。なんだか、とても似た話な気がします。

Q&Aの最終更新日 : 2012-01-11