Research of bikou

千葉大学園芸学部•園芸学研究科
Research Group of Microbial Engineering

微生物工学グループにおける研究内容(概要版)


このページでは、この研究室で進められている研究のアウトラインについて解説しています。さらに詳細な研究内容についてはAMACHI(準備中)、もしくHANAOKAのホームページを参照して下さい。

バクテリアの環境応答、生存戦略

7120-0004.jpg微生物は一個の細胞でありながら、自然界の中で独立して生き抜いてきた生物でもあります。バクテリアが厳しい自然環境の中で繁栄し生き抜いてきた背景には、どのような巧妙な生存戦略があるのでしょうか。そのしくみについてシアノバクテリア(光合成細菌)の光環境適応、乳酸菌の耐酸性、大腸菌の代謝調節系などをテーマとして研究を進め、微生物の生き様を詳しく明らかにしようとしています。このような研究は、微生物を用いた発酵生産性の向上や、光合成能の増強による環境問題への対処などに役立つと考えられます。

自然環境中の元素循環と微生物

Iod.jpg地球上の生物圏には大規模な物質循環があり、その主要な部分は微生物によりなされているのですが、その実体にはまだ不明な点が多く残されています。本研究室では、窒素、ヨウ素、ヒ素などの循環に関わるバクテリアや、その代謝系の研究を行っています。ここで得られた成果は、人間活動により大きな影響を受けつつある環境の変化に対処するために重要な知見を与えます。



これらの研究は、微生物が細胞や集団として、あるいは生態系の中でどのような存在であるかを知り、微生物をコントロールしたり改変したりして役に立てていくことを目指したものです。これまで知られていなかった微生物の新しい機能をみつけたり、有用な機能を増強することで、現在人類が直面している様々な危機に対処することは微生物学に課せられた重要な課題です。

これら課題に加え、私たちはさらに細胞共生、オルガネラ、進化などをキーワードに、微生物学の視点から真核細胞の進化や基本構築の研究を進めています。


真核生物の基本構築をバクテリアの細胞共生から考える

sizon.gif地球上で真核細胞が進化したのは、バクテリアが誕生してからずっと後のことです。そしてこの進化には、バクテリアによる細胞共生が深く関わっていました。ミトコンドリアや葉緑体のような真核細胞のオルガネラは共生したバクテリアの末裔です。微生物間の相互作用が細胞共生に発展し、そこから新しい微生物の進化が起こったのですから、真核細胞の進化の問題はまさに微生物学の重要なテーマなのです。本研究室ではこのテーマを追求するために、原始的な真核細胞である微細藻類を用いています。ここで得られる成果は、真核細胞の根底にある制御機構の解明につながり、動物や植物にも共通なしくみを明らかにすることと期待しています。

オルガネラ分化と植物細胞機能

Cp.gif植物細胞の中の葉緑体は太古のシアノバクテリアが細胞内共生して生じたものですが、今でもバクテリアの性質を多く残しています。一方、葉緑体は植物細胞の中で多様な分化を行いますが、これはオルガネラとなった後に獲得された能力です。この研究では、葉緑体の分化を共生バクテリア側からの視点で捉え直し、その分化や増殖の原理的解明や、さらには人為的コントロールを目指しています。この成果は、微生物学の視点での研究でありながら、植物育種にまで応用範囲が広がるものと期待することができます。