~ナシ園経営者が語る、園芸学部での学びを生かして~
氏名:渡来 裕途さん
卒業学科/専攻:園芸経済学科(※現:食料資源経済学科)(2007年度卒業)
勤務先:松戸市にてご実家の日本ナシ園を経営
経歴:千葉大学大学院園芸学部卒業後、就農。
(インタビュー実施月:2024年3月)
(インタビュアー:櫻井 清一 教授)
Q1.はじめに、なぜご自宅の農業を継がれたのですか?
我が家の周辺には、ナシ園を営む専業農家がたくさんあります。
また、消費者の多い松戸市内に立地していますので、収穫したナシのかなりの部分を自宅前の販売施設や宅配便での直売により、高い収益をあげている農家も多いのです。
そのため、農業を継ぐことにあまり心配はありませんでした。
三人兄弟のうち男性は私一人だったこともあり、自然と自宅の経営を継ぐ決心がつきました。
Q2.就農を早くから意識しながら、学科としてなぜ園芸経済学科(当時)を選ばれたのですか?
農家出身ですので、栽培技術は自宅、あるいは周辺のナシ農家や専門家から学べると考えました。
それよりも、自宅でも直売をしていますので、流通や販売に興味がありました。こうしたことを幅広く学ぶには、園芸経済学科がよいと思いました。
Q3.実際に園芸経済学科に入学した時の印象はいかがでしたか?
入学して驚いたのは、農学系の学部であるにもかかわらず、農家出身者がとても少なかったことです。
ですが、園芸経済学科は授業科目も多様ですし、卒業論文のテーマも自由に設定することができました。一つのことに固執せず、いろいろ学べた点は良かったです。印象に残っている科目は、農場実習ですね。
学科の同級生とは、授業時間だけでなく、いろいろな場で一緒に過ごしました。
今でも連絡を取り合っています。ナシのシーズンになると私の農園にナシを求めてやってくる仲間もいますよ。
Q4.学科で学んだことの中で、実際の営農に役立っていることはありますか?
同じナシに接しても 、ある方にとっては普段食べる果物であったり、別の方にとっては贈答用に使える高級品、また、ある方にとってはもぎ取りというレジャーの対象として認識されるでしょう。
お客様のナシの見方は多様です。
このように、多面的に物事をとらえる視点を身につけることができたと思います。
Q5.その他、学生時代に取り組んだことはありますか?
サークルには入っていませんでしたが、アルバイトをよくやりました。
中でも印象に残っているのは、今は閉店した津田沼パルコに入っていた映画館でのアルバイトですね。
最初はチケットのもぎりを担当していましたが、やがて映写技師も任されるようになりました。
今と違ってフィルムを使う映写では、複雑な技術を要するのですが、いい思い出です。
最後に、学生へのメッセージをお願いします。
園芸学部に入学する方でも、卒業後に実際に農業の生産現場に立つ方は少ないと思います。
しかし、食やそれを支える農業はどの人にとっても、意識せずとも日常生活の基盤になっていると思います。
食や農のことをより深く理解できると、生活の現場で何か判断を求められたとき、意外と柔軟な判断ができるように思えます。
食や農に関する知識や経験は、けっこう応用がきくと思います。
松戸で幅広く学んでください。
渡来さん、ありがとうございました!