~園芸学部で培った「仮説と検証」の思考が、新規事業を生み出す力に~

氏名:水木 孝幸さん
卒業学科:生物生産科学科(現:応用生命化学科)(1995年度卒業)
勤務先:APT株式会社 / 代表取締役
経歴:千葉大学園芸学部卒業後、(株)ヤクルト本社中央研究所にて新商品の開発に従事。新規事業を創出できる人材になることを目指して転職。その後、株式会社ミュージックエアポート事業部長、LivingImage Inc. COO、株式会社ウィール(現:株式会社デジタルガレージ)取締役、弁護士ドットコム株式会社取締役COO等を歴任。リラックスドリンク「レモリア」や電子契約サービス「クラウドサイン」をはじめ、多数の新商品開発や新規事業の立上げ、国内外での新会社の立上げに携わる。
現在はAPT株式会社代表取締役、株式会社アコード・ベンチャーズ取締役パートナー。EMBA-Global Asia(コロンビア大学/ロンドン・ビジネス・スクール/香港大学ジョイントEMBAプログラム)にてMBAを取得。
(インタビュー実施月:2026年3月)
(インタビューアー:江頭 祐嘉合 教授)
Q1.初めに、今の仕事の内容を教えてください。
現在は2つの仕事をしています。
1つは、スタートアップや上場企業に対する経営全般のコンサルティング業務(主に成長戦略の策定や新規事業の立ち上げなど)です。
もう1つは、ベンチャーキャピタルファンドを通したスタートアップへの投資と育成です。国内にとどまらず、米国やシンガポールなど東南アジアのスタートアップにも投資しています。
Q2.ヤクルト本社中央研究所での新商品の開発から、弁護士ドットコム株式会社取締役など多くの経歴をお持ちですね。なぜ起業を目指されたのですか?
ヤクルト本社中央研究所での新商品の開発も楽しかったのですが、大企業における研究開発では分業が進んでおり、どうしても担当業務の範囲が限られてしまいます。商品のコンセプトや中身そのものには深く関われても、パッケージングやマーケティングは別の部署が担当します。ビジネスの上流から下流までを一気通貫で動かすためには、ベンチャー企業の方が向いていると思い、転職を決めました。
また、もともと好奇心が旺盛で、知らない業界や新しい仕事への興味が強いことも大きな動機でした。その流れの中で、起業したばかりの会社や成長途上のスタートアップから声をかけていただく機会が増えていきました。
Q3.仕事で心がけていることは何ですか?
「新規事業の立ち上げ」という自分の専門性を軸に、新しい技術やビジネスの知識を常に学びながら、さまざまな業界の企業で経験を積むことを意識しています。そうすることで、希少性が高く応用範囲の広い、ユニークなポジションを築けると考えています。
Q4.園芸学部で学んだことは、現在の職業にどのようにつながっていますか?
スタートアップにおける新しいサービスやビジネスモデルの検証プロセスでは、「自然科学的なアプローチ」が主流になっています。具体的には、仮説を元に実験系を組んで、試行してみて、結果を検証することを繰り返すことです。学生時代に学んだ経験が一番生きているのはその点だと思います。私は、仮説と目的を明確にすることで、学びの質が大きく変わることを何度も体験しました。研究では当たり前のことかもしれませんが、こうした考え方は、現在の仕事にも生かされています。
Q5.今後の展望や心掛けていることを教えてください。
日本のスタートアップ環境をより拡張していくことに貢献できればと思っています。
日本は国内総生産(GDP)が世界4位と比較的大きいため、これまでのスタートアップは国内市場向けのビジネスを志向する傾向が強かったように思います。しかし、今後の日本では急激な人口減少も予測されています。コンテンツ産業や競争力のある技術など、日本の強みを生かしながら、海外の起業家やスタートアップとの協業を増やし、この閉塞感を打ち破っていく必要があると考えています。
Q6.千葉大学では、どのような学生生活を送っていましたか?
研究室はアットホームな雰囲気で、先生方や同級生、先輩たちとのイベントも多く、ある種の「コミュニティ」に属しているという感覚がありました。研究室のOB会も含めて、この関係は社会人になってからも続いています。
Q7.現在の学生と、ご自身の学生時代を比べていかがですか?
今の学生さんは、様々なオンラインサービスを通じて簡単に多くの知識にアクセスできます。そのため、モチベーションが高く、能動的な人は多くのことに自発的に挑戦できますが、一方で受け身のままだと逆に取り残されてしまう可能性があるかもしれません。個人差が広がっているように感じます。
Q8.学生へのメッセージをお願いします。
何事に対しても、受け身ではなく自発的/主体的に取り組んでください。
これからはAIの時代と言われていますが、今のところAIには主体性がありません。そのため、それをツールとして有効に使える人が有利になると思います。AIが社会や個人の生き方にどのように関わってくるかを見据えつつ、自分の情熱が湧く分野、たとえ小さくても自分がアウトプットの"起点"になれるような職業を見つけることが、ひとつの考え方かもしれません。
水木さん、ありがとうございました。