大学で学んだ知識を生かして農業・農村の未来を作る
氏名:上大川 渉太氏
卒業学科/専攻:食料資源経済学科(2012年度卒)、食料資源経済学専攻(2014年度修)
勤務先:株式会社三祐コンサルタンツ(農村開発に関わるコンサルティング業務)
経歴:千葉大学大学院園芸学研究科博士前期課程修了後、2015年4月より現職
(インタビュー実施月:令和3年7月)
(インタビュアー:丸山 敦史教授)
Q1.初めに、なぜ農業開発コンサルティング業務に興味を持ったのですか?
A1. 高校生のころ、授業をきっかけに、日本が行っている開発途上国への支援に興味を持ちました。そして、途上国では農業が社会や経済の中心にあることから、農業分野の果たす役割が大きいと考え、大学では農業経済学を専攻しました。大学院に進み途上国支援に必要な専門性を磨いていくなかで、海外への農業技術支援には、国内の農業農村開発事業のノウハウが生かされていることを知り、その両方を身につけることで将来の可能性が広がると考えるようになりました。現在は、国内外の農業開発の分野で実績が豊富な株式会社三祐コンサルタンツで、国内の農業・水資源開発業務を行っています。
Q. お仕事で最も印象に残ったエピソードを教えてください。
A.これまでの仕事で特に印象に残っているのは、農業事業評価の経済効果の算定に関して新たな手法を提案し、それが最終的な算定に採用されたことです。経済効果算定は他事業との整合性を維持し、国民への説明責任を果たすという観点から様々なマニュアルが用意されています。しかし、その算定方法には一貫性に欠く部分があり、改善を図りました。自分の考えたことが形になり、新たな算定基準となっていくことに大きな喜びを覚えました。
Q. 園芸で学んだことが、今の職業に繋がっていますか?
A.大学・大学院で得られた農業に関する知識は、広く業務に生かされています。経済効果の評価については言うまでもありませんが、事業実施地区の将来的指針なる営農計画の策定する際は、農産物の生産現場から、流通・消費に至るまでの幅広い知識が必要となるため、園芸で学んだことに無駄なものはなかったと思っています。
Q. 今後の展望、心掛けていることを教えてください。
A. 常にステークホルダーの立場に立ったコンサルティングを心掛けています。どのような事業にも、農家の方だけではなく、周辺住民の方、農産物の消費者、関係自治体の関係者など、関係する人は多様です。また、近年は持続的発展について考えることは不可欠なものとなっていて、食料の効率的増産だけではなく、多様な価値観に基づく持続的な事業計画が求められています。大学や大学院で身に着けた知識を活かしつつ、多様性を理解できる知識と経験を身に付け、今後も国内外問わず農業農村の開発事業に関わっていきたいと思います。
Q2.千葉大学では、どのような学生生活を送っていましたか?
A2. 学部生時代は、2年次までは授業とアルバイト中心の生活を送っていました。3年次からは研究への関心が強くなり、頻繁に研究室に通うようになりました。指導教員とのコミュニケーションは、同級生より多かったと思います。大学院では、ワシントン大学やフィリピン大学へ留学し、初の海外生活を体験しました。
Q. 園芸学部を志望した理由を教えてください。
A. 冒頭にも述べましたが、高校生の時に途上国支援に興味を持ち、それに携わる業界について調べていたところ、農業支援が途上国援助に与える影響の大きさに惹かれ、農学系の学部を目指すようになりました。園芸学部食料資源経済学科は、食料生産や環境・国際協力などの領域で活躍できる人材の育成を謳っており、自分の関心に合っていると考えたからです。
Q. 今の学生と、上大川さん自身の学生時代を比べてどうですか。
A.会社説明会やOG訪問で園芸学部の学生にお会いする機会がありますが、当時の自分とは比べられないほど自立し、自分の考えに基づいた意見をもっていると感じます。
Q3.最後に、学生へのメッセージをお願いします。
A3. 農業開発コンサルタントという仕事柄、本大学・大学院で学んだことは、社会に出てからとても役立ちました。また、千葉大学で築いた交友関係はもちろんのこと、海外留学先で出会った人々との交流は卒業後も続いています。面倒くさがり屋の私ですが、多くの方々のおかげで、思いもよらない人との出会いやとても貴重な経験が出来たと思っています。学生でいられる期間はとても短いですが、ぜひ皆さんも積極的に色々なことにチャレンジしてください。その経験は、キャリアを積んでいく上で、かけがえのないものになります。
上大川 渉太さん、ありがとうございました!